宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

篠原孝さん、野党なのに修正案・付帯決議を両方発議の離れ業 衆・環境委

2013年05月10日 18時12分02秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

【衆議院環境委員会 2013年5月10日(金)】

 きょうは衆院環境委で珍しい出来事がありました。

 閣法である「フロン回収・破壊法の改正法案(183閣法61号)」が5党修正で可決しました。5党とはもちろん、「自公【民】維み」ということで、「自公民」と「民維み」を民主党がブリッジしたものでしょう。

 この採決で、5党共同提出の修正案を野党側筆頭理事の篠原孝さんが趣旨説明しました。

 これが可決された後、同じく5党提出の付帯決議案が出ましたが、これまた篠原孝さんが趣旨説明しました。

 与野党共同提出の修正案や付帯決議案は、実務者がそれぞれの名前を出すという不文律があります。5党提出で修正案と付帯決議案を同じ議員が読むのは異例です。しかも篠原さんは野党側筆頭理事です。野党側筆頭理事が内閣提出法案の修正案を出し、さらに付帯決議案も出して可決させたのは、憲政史上何度目かは知りませんが、極めて異例。

 そもそも環境委員30人のうち民主党は3人しかいないので、「実務者」と「筆頭理事」が兼務。仕事が早いので、与党側筆頭理事(元環境副大臣)も「やってください」。さらに「民維み」で唯一政権担当経験がある。

 とはいえ、何でも与党を助けてばかりというわけにはいきませんが、法律の本則・付則や付帯決議のなかで、「何年後に見なす」という見直し規定を入れることで、民主党は「見直すときに政権を取り返す目標」、自民党は「今国会成立」のギブ・アンド・テークができているようです。

 民主党の異端児ともされる篠原さんですが、「篠原筆頭理事」で絞ってみると、民主党の体質の変遷を追えます。

 第1次野党期には、スキャンダルで「大臣の資質」に疑問があるため、副大臣、政務官に質問する戦術をとりました。伝統的に与党・自民党は党内政調部会重視で、国会軽視ですから、小泉チルドレンらは大臣に質問しないため、大臣は手持ちぶさたに心が空白になったようです。しかし安倍首相からは「ガンバレ」と言われ、そして連休明けに、大臣席まで空白になりました。理由は分かりません。安倍首相も党内タカ派の仲間を失い「慚愧に堪えない」とかなりショックを受けていました。間違いなく「憲政史上最強の野党理事」は参院選大勝後に、自ら外務委員への移籍を申し出ました。

 その余勢を勝って実現した第1次与党期では、篠原さん自らスカウトした後輩が農水政務官になってしまい、自らは政府外に。玄葉光一郎・財務金融委員長のもと筆頭理事を務め、マニフェストになかった「中小企業金融等円滑化法案」を小沢・山岡国対の指示で強行採決。本会議で玄葉委員長解任決議案、松本剛明議院運営委員長解任決議案が審議され否決された後、政権交代後第1号法案として成立しました。

 こういった不条理を飲み込みながらも、篠原さんは地元で「独自の主張」を展開。最も強硬な中選挙区復活論者にもかかわらず、なぜか小選挙区にも強い篠原さんは勝ち残りましたが、党は当然にして下野。こうして迎えた第2次野党期は、自民党政府提出の法案を能力があるので自分で修正しちゃってどんどん可決させる。そして、付則や付帯決議に「見直し規定」を入れて、野心を燃やす。

 能力差のある他党議員に遠慮せず、自分の党の国対にもさほど遠慮しない。党政調に関しては、そもそも篠原さんはネクスト環境相(兼)原発事故収束相なので気兼ねはいらないでしょう。どんどんやる。民主党・無所属クラブ(衆院会派)はまさにオールスターキャストの感があります。

【衆議院本会議 2013年5月10日(金)】

 長妻昭さんが、田村厚労相の「厚生年金基金の解散・存続に関する厚生年金法改正法案(183閣法53号)」の趣旨説明に対する代表質問に立ちました。

 「答弁が不十分なら再質問をします」と宣言して、ストップウォッチを押して質問。再質問を要求すると、伊吹文明議長(イブキング)が「議場内交渉係が協議していますので、急がせますので、お待ちください。いいのか、おい。協議が整ったようですので、長妻昭君に再質問を許しますが、2分間ですので、簡潔にお願いします」と議事を進めました。

 長妻さんは「民主党の年金改革案もありますが、野党になってしまいましたので、年金制度の抜本改革の制度案については自民党からもたたき台を出して欲しい。(国民会議に連動した実務者による)3党協議や(昨年の)3党合意を守る気はありますか」と質問しました。

 ところが、どういうわけか、ふたたび自民党の議場内交渉係が登壇し審議がストップ。イブキングは「おいおい、いいだろう。答弁してもらったら。おい」と言って、民主党の議場内交渉係(渡辺周・議運筆頭理事)を呼びますが、当然、自民党の理事もついてきました。そしてイブキングは、渡辺さんを隣に従え、「総理に(長妻再質問の気に入らない点も含めて)答弁してもらえばいいだろう」と自民党の議場内交渉係を叱りました。 


[画像]伊吹文明・衆議院議長。民主党の渡辺周・議場内交渉係を従える格好で、自民党の議場内交渉係を注意するようす、2013年5月10日(金)。

 安倍総理は再答弁で「3党協議の状況や国民会議を踏まえて検討します」と明言。

 民主党にとっては非常に重要な答弁となりました。

 イブキングは第180通常国会の衆院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)の野党側筆頭理事でしたし、(関連エントリー一体改革特、自民党質問がスタート 伊吹文明筆頭理事はもっとまっすぐな志でのぞめ!)、長妻さんは実務者として修正し、社会保障制度改革国民会議法の筆頭発議者となっていました。

 この、イブキングの絶妙な、長妻フォロー、いや3党合意フォローに、「3党合意でまったく汗をかいていない」とされる安倍首相(自民党総裁)が「3党協議と国民会議尊重」を答弁しました。そして、次に登壇した議員が「私は3党合意の3党に含まれていない日本維新の会の伊東信久です」と、センスが良いというか、政治家としては正直すぎるというか、そういう演説の下、3党合意がしっかりと進むべき道を示しました。

【参議院本会議 2013年5月10日(金)】

 マイナンバー法案が参院本会議で審議入りしました。事前の採決日程にさきだって、大臣の趣旨説明と質疑が行われました。異例の議事次第であり、おそらく安倍首相、甘利一体改革担当相のスケジュールの都合だと考えますが、3党合意の低所得者対策の実現に不可欠なマイナンバーだけに、少しでも早く成立させようという意欲がうかがえました。

 代表質問で、事業仕分けなど行政改革担当の内閣府副大臣を務めた民主党の藤本祐司さんが「民主主義の原則は、参加と公開と納得である」「デメリットも公開する」と述べ、マイナンバー導入の費用の高さや、個人カードの普及に関する政府のぶれ、施行後3年後の見直し規定による範囲の拡大(による情報セキュリティへの懸念)を質問しました。

 「オープンガバメント」の民主党らしさを示しました。

 
[画像]マイナンバー法案の質問にたつ、前内閣府副大臣で民主党の藤本祐司さん。

【衆議院内閣委員会 2013年5月10日(金)】

 衆院内閣委では、
岡田克也さんが質問に立ち、菅官房長官に閣議と閣僚懇談会の議事録作成について、民主党政権での有識者とりまとめに沿って実施するよう迫りましたが、菅長官は拒否しました。

  
[画像]質問する岡田克也さんと答弁する菅義偉・官房長官、2013年5月10日、衆院内閣委。 

 甘利一体改革担当大臣は「社会保障制度改革推進国民会議と(それにそった3党の国会の実務者による)3党協議はダブルトラック(並行的に)やる。次回の5月17日の国民会議から年金関係の話になっていく」と述べ、3党合意、一体改革関連法の中核である社会保障制度改革推進基本法の履行を明言しました。

 3党合意と、5党修正と、オープンガバメント。

 この骨組みのもと、3年後に全選挙区に候補者を立てられる政党は自民党と民主党の2つしかない。

 「見直し規定」の時期に「与党か、野党か」というのは、これは愚問です。

 進むべき道がはっきりと見えてきました。

 今週の国会は、衆院で昨年6月の改正時の付帯決議を受けた、「災害対策基本法改正法案(183閣法56号)」「復興法案(183閣法57号)」が審議入りました。これは震災の教訓から、復興計画や被災者台帳の作り方をあらかじめ定める法案です。東北の復興はまだまだ時間がかかりますが、震災後国会がようやく、「次(いつか必ずくる次の大災害)」の段階に入ってきた感じがしました。

 そして、
4月25日の参・厚労委(武内則男委員長)で審議入りした脱法ハーブを取り締まる改正麻薬取締法・薬事法(183参法4号)」もきょう衆本で可決・成立しました。


tags 安倍晋三 甘利明 菅義偉

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