[写真]ともに右を向く民主党の江田五月さんと長島昭久さん、各々の公式ホームページから。
ようやく左翼の連中(自称・知識人)に余裕が無くなってきてくれたおかげで、日本国憲法96条の「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し国民に提案」するという条項を「過半数」にかえる「96条先行改憲論」が一気に勢いが出てきました。
私は20年来の改憲(自主憲法制定)論者ですが、この「96条先行改憲運動」はあまり知らず、ここに来て勢いを得ているのは意外です。しかし「過半数」となると、時の与党の賛成だけで発議し、低投票率の国民投票で過半数あればいいことになるので、これはよく考えると、よくありません。
2013年5月3日の憲法記念日を境に民主党内に日本国憲法を条文ごとに改正する「部分改憲論」が浮上しました。
4月30日の常任幹事会で、民主党憲法調査会の副会長にわれわれ改憲派のオピニオン・リーダー、長島昭久さんが就任。
これに先立つ30日付読売朝刊4面は参院民主党(民主党・新緑風会)元会長の江田五月さんと長島昭久さんのインタビューを載せ、「96条改正 民主に亀裂」との見出しで民主党対立を印象づけました。
民主党幹事長の細野豪志さんは2日の記者会見で、「憲法調査会の副会長に長島さんも入ってもらった」と自ら言及し、憲法論争の調和を図りました。自民党が新旧対照表つきで昨年4月に決定した憲法改正草案への対案について、「2005年の民主党憲法提言はよく練れている」「民主党として最優先で提案できるのはどこか。いくつかの条文について具体的に提案したい」と述べ、部分的な改憲案を条文ごとに具体的に提示する考えを示しました。押しつけ憲法論を国家として認めてしまうことになりかねない全文改正案には消極的姿勢でした。
読売新聞のインタビューで江田さんは「憲法は歴史的な産物で、戦後これだけ時間がたっていろいろ状況も変わっています」とし「たとえば、地方自治について92条に『地方自治の本旨に基づいて』と書いているけど、何が本旨だかよくわかならい」と「部分改憲」に言及しました。江田さんは「民主党内には憲法についていろんな意見があります。しかし、改正消極派も、どこかの政党のように憲法に指一本触れさせないというスタンスは取っていないはずです。共通点を見つければ難しくないと思います。民主党が2005年に作った憲法提言はよくできています。国民にアピールするために、かみ砕き、もう少し簡素にしてみる作業を進めるべきだと思っています」と語りました。
第8章地方自治は戦後新設されたもので、GHQ押しつけのため、日本語がこなれておらず、新憲法を肉付けした「地方自治法」(昭和22年4月17日法律67号)も、突貫工事の爪痕で、一つ一つの条文は明確な表現でも、 前後の文脈がよく分からない面が散見されました。とくに「県の合併は互いの県議会が決定できる」としながら別の条文で「県の境界線は国会が決める」と矛盾したへんてこな法律でしたが、最近改正されました。憲法も改正すべし。
長島さんのインタビューでは「現在の憲法はそろそろ限界に来ているように思います。環境権やプライバシー権など新しい人権を明文で盛り込むべきだし、9条の問題に解釈で対応し続けるのも難しくなっています」としました。そのうえで、「民主党が憲法という重要な課題でコンセンサスを作れないようでは仕方がない、とおしかりを受けるかもしれません。ただ、くもりなく見れば、2005年の党の憲法提言は改正の提言なんです。現行憲法の課題を書いているわけで、改正せずに課題が解決できるわけがない。党内でも憲法の中身の議論を早くやりたい。議論をしたうえで、どうしようもなければ党議拘束を外し、政治家の良心に従って発議の投票をするのも一つのアイデアです」としました。
このうち、プライバシー権については、最高裁判所は昭和56年(1981年)に「前科・犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないのは法律上の保護に値する利益である」とし、憲法13条の幸福追求権などから勘案して、憲法上の権利、人権であるとしていますが、現行憲法上に明文はありません。(参照、芦部信喜『憲法(第1版)』103ページ)。
読売のインタビューでは、江田さんと長島さんは部分改憲で一致しました。
憲法を全文改正してしまうと、GHQのマッカーサーあるいは民政局の押しつけ憲法であったことを国家として認めることになり、若者の自信を失うことになります。せっかく、社民党が衆院予算委員での議席を失った第183国会。マイナンバー法案も衆院委員会で可決しました。社会党は、幹事長経験者である江田三郎さんを政権交代ある政治を目指している「改良主義者だ」として追い出しました。これは、江田さんが社会主義革命(天皇陛下を殺す暴力革命)の達成ではなく国会の中で日本を良くしようとしているからけしからん、という荒唐無稽な批判です。極端に走った連中が暴走したわけですが、こういう極端な論を展開した方が組織が守れます。一方、社会党が野党第1党でいられたのは、中選挙区制の下、3人区なら1名、5人区なら2名という「3分の1以上」の候補者を出せば護憲政党としての責任を果たせた、という言い逃れができるという執行部と現職国会議員の既得権益が一致したためでした。過半数をとって政権を取ろうという気構えを持った議員は江田三郎さんや田辺誠初代シャドウ首相が率いる「政権構想研究会(政構研派)」にいましたが、「3分の1」に安住する土井たか子氏を担ぐ「社会主義協会(協会派)」が憲法96条を盾に護憲運動を盛り上げ、それにころっと引っかかった「自称・知識人」が脚を引っ張りました。すなわち、社会党は憲法やくざ。改称した社民党がベルリンの壁崩壊から20年後まで衆院予算委に議席を持ち続けてしまったことは、憲法96条は、社会党を助けて日本をくじいたと罪深き条文です。
その一方で、「だから過半数」という論理のすり替えをしてしまうのが自民党の50年政権の常套手段。政権交代ある保守二大政党になったのだから、自民党はあまり肩に力を入れて極端に走る必要はありません。ある程度政権を担当して、腐ってきたら、民主党に替わってもらって、反省点をノートにしたため次に備えればよい。
これまでは、改良主義をとった政党は、獲得議席は少数にとどまってきましたが、自民党か民主党かの政権交代ある二大政党政治が実現した今は、互いに改良主義であっても、お互いに一定の議席はとれることになります。
弱い人を救える日本のためには、権力者は右手が強くなければなりません。憲法の改良主義で、北極星のように不動の憲法(不磨の大典)という理想ををめざし、シリウスのように輝く日本という現実をめざす。それが憲法改良主義であり、日本改良主義です。改良主義の時代がやってきました。
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