極端な恥ずかしがり屋さん、実は病気かも
主婦の小林和子さん(31歳・仮名)は子供の頃から内気な性格。優しい夫と出会い子育ても順調にこなしていたが、今年、子供の小学校入学をきっかけにつらい体験をした。くじ引きでPTAの役員が決まったが、最初の集まりで恥ずかしさのあまり顔が紅潮、汗が噴き出て何も話せなかったのだ。小林さんは、それを機にふさぎこみ、やがて近所の人に会うのも不安で外出できなくなった……。

杏林大学保健学部の田島治教授は「人から注目を集める場合に強い不安を感じることは誰にでもあり、それを『あがり症』などと呼ぶ。しかし、この主婦の例のように恥ずかしい気持ちが極端に強く、それを避けようとするあまり日常生活にも影響が出る場合を社交不安障害と呼ぶ」と話す。最近の臨床研究でSSRI(選択的セロトニン再取りこみ阻害薬)といううつ病などに使われる薬が有効であることが明らかになったことで注目されるようになった。
社交不安障害はいくつかのタイプがあることも分かった。人前で話したり、試験を受ける、会議で意見を求められるなど、さまざまな社交的場面で症状(下図)が起こるのが全般型。それに対して「人前で字を書くと手が震える」など特定の状況で症状が現れるのを非全般型と呼ぶ。人前で食事ができない、人前で電話に出ることができないという症状もあるという。

診断方法について田島教授は「全般型については優れた問診票が開発されているので、医師が問診票に沿ってチェックすることで症状の程度などが分かるようになった」と話す。治療は薬物治療と精神療法を組み合わせて行うことが多い。田島教授は「SSRIの投与を開始すると、次第に緊張が取れ始め、3カ月ほどで症状が改善する。認知行動療法を併せて行うことで再発を防ぎ、最終的には薬を使わないで生活できるように回復させる」と話す。

これまでは誰にもいえず苦しんでいる患者も多かった社交不安障害。最近では病気に関するウェブサイトに問診票が紹介され自己チェックも可能だ。気になる人は、自己チェックの結果などを基に専門医に相談してみるといいだろう。
(ライター 荒川直樹)
[日経ヘルス2011年6月号の記事を基に再構成]
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