脂肪肝は放置禁物 食べ過ぎ避け食前に高カカオチョコ

実りの秋から宴会の多い年末年始にかけて暴飲暴食しがちになる人も多い。注意したいのが肝臓に中性脂肪が過剰にたまる脂肪肝。放置すると深刻な疾病を招く。食生活の改善などくらしの見直しで予防したい。
日本人の4人に1人が罹患(りかん)しているといわれる脂肪肝。肝臓を構成する肝細胞の約30%以上に中性脂肪がたまった状態を指す。
武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)院長の泉並木氏によると「原因は飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足。近年、こうした生活習慣が引き起こす肝臓病が急増している」
血液検査で肝臓の障害を示すASTやALTの数値が低くても脂肪肝になっていることがある。「疑いがあるなら超音波検査も受けてほしい」(泉氏)。脂肪肝は画像に白く写るのですぐわかる。
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気は自覚症状がほとんど表れない。そのため脂肪肝と診断されても放置してしまう人が多い。しかし肝細胞に中性脂肪が過剰に蓄積されると、肝臓内の血流障害が起こる。すると酸素や栄養素がすみずみまで行き渡らなくなり、肝機能が低下する。
脂肪肝はアルコール性と非アルコール性に大別される。かつては大酒飲みの人がなるものと思われていたが、飲酒しない人でもなる後者が増えていることが、最近注目されている。非アルコール性脂肪肝の1~2割が肝炎につながることもわかってきた。
栗原クリニック東京・日本橋(東京・中央)院長の栗原毅氏は「脂肪肝を放置すると肝炎、肝硬変、さらに肝臓がんへと進行するケースがある」と警告する。脂肪肝のうちに生活習慣を改善することが大切だ。
アルコール性脂肪肝は、もちろん飲酒を控えめにすることが第一の改善策となる。
非アルコール性脂肪肝を克服するには、過食をやめ運動不足を解消することが必須条件。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になる。そして処理しきれなかった分がどんどんため込まれるという。

栗原氏は「中性脂肪を増やす元凶は糖質の取り過ぎ。ごはんを茶わん7分目にするなど、毎日の食事から糖質を10%減らして」と助言する。
糖質の中でも一番避けたいのは、血糖値を急激に上げるジュースなどの清涼飲料水だ。のどが渇いたら、水やお茶を飲むようにしたい。

意外なことにフルーツも脂肪肝にはよくない。単糖類の果糖は吸収が早く、肝臓で中性脂肪に変わりやすい。少量を楽しむようにしよう。
栗原氏が薦めるのはカカオ分70%以上の高カカオチョコレートだ。「糖質の吸収を抑える食物繊維が豊富。抗酸化力のあるポリフェノールも含み、肝機能改善に役立つ」。1日25グラムを数回に分け、食前に取るのがベストだという。
食事の見直しだけでなく、運動を日常習慣にして肝臓にたまった中性脂肪を燃やすことも忘れずに。有効なのは有酸素運動だ。呼吸とともに取り込む酸素によって脂肪は燃えやすくなる。泉氏は「1日30分、軽く汗ばむくらいの早歩きを行うとよい」と話す。通勤しているなら、降車駅の1つ手前の駅で電車を降りて歩くなどすると続けやすい。
ウオーキングに慣れてきたら、筋肉を増やす運動にも挑戦しよう。栗原氏はスロースクワットを朝晩10回ずつ行うことを推奨している。「5秒かけて息を吸いながら膝を曲げ、また5秒かけて膝を伸ばす。ゆっくり動かすのがコツ」。下半身に筋肉がつくと基礎代謝が増え、ウオーキングの脂肪燃焼効果も高まる。
地道な取り組みによって脂肪肝は改善する。適切な食事や運動が基本と心得よう。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEIプラス1 2019年10月19日付]
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