寝る前にストレッチ 体を柔らかく、太りにくく
日経ヘルス
パソコン作業などで座っている時間が長く、ほとんど運動をしていないと、私たちの体の筋肉は凝り、活動量や消費エネルギーも落ちてくる。血の巡りも悪くなって、肩こりやむくみ、冷えを招くこともある。
冬の不調を予防
そんな"太るサイクル"から抜け出すためにおすすめなのが、ストレッチだ。
ストレッチの魅力は、激しい運動や無理な食事制限をしなくても、体質が変わること。運動量は小さいが、筋肉をのばすことで凝った筋肉がほぐれるので、体の動きが大きくなり、日ごろの消費エネルギーが自然とアップする。
さらに、きちんと動かしている部分には脂肪がつきにくく、筋肉のポンプ作用で血流やリンパの流れもよくなるので、むくみや冷えなどの不調も予防できる。寒い冬がやってくる前に、柔らかくて太りにくい体になっておきたい。
疲れが取れにくい、よく眠れないというときは、胸周りの筋肉が緊張したまま固まっている可能性がある。
「胸や背中、腹まわりの筋肉が凝り固まっていると、胸郭の動きが妨げられて、呼吸が浅くなってしまう」と話すのは、整体師でブリージングストレッチ院(東京都台東区)院長の古久澤靖夫氏。
深呼吸をしたときの胸郭の周囲の膨らみが3センチ未満の場合、「横隔膜や肋間(ろっかん)筋などの呼吸に深くかかわる筋肉がスムーズに動いていないと考えられる」と、理学療法士で文京学院大学保健医療技術学部の柿崎藤泰准教授もいう。
胸郭の動きは、ひもを使って簡単に調べられる。アンダーバストを測る要領でみぞおちのあたりにメジャーやひもを回し、思いきり吸った時と吐いた時の差を見ればいい。
差が5センチ以上あるのが理想。それに満たない人は、古久澤院長が考案した「ブリージングストレッチ」を試してみよう。右上の表に示した5つのストレッチで、呼吸に関わる筋肉を効率的にほぐせるようになっている。
まずアプローチするのは、みぞおち。ためしに、胸の中央の骨(胸骨)の下部にあるみぞおち部分に軽く指を当てて、触ってみよう。張っていて指が押し戻される、胃が圧迫されるような不快感があるなら、緊張している証拠だ。
「ストレスを強く感じている人は、ここが特に硬くなっているはず」と、古久澤院長。今年は東日本大震災や原発事故など、経験したことのない出来事が続いて、体の緊張が取れなくなっている人が特に多いという。
一つ目の「みぞおちゆるめストレッチ」では、指先でみぞおちの硬さを確認しながら、息を長く吐いたときに上体の重みで指先が無理なく入っていくように力を抜く感覚をつかもう。
緊張したまま硬くなったみぞおちが緩むことで、腹直筋の力が抜け、横隔膜の動きが良くなって、息を長く、たくさん吐けるようになる。
「深い呼吸の絶対条件」と古久澤院長が指摘する「胸の柔軟性」には、みぞおちのほかにも、背中や体幹部を支える股関節周辺、脇腹などの筋肉のほか、骨盤の傾きも影響している。
入浴後ふとんでストレッチ
ブリージングストレッチは、最初は無理をしないで、「痛いが気持ちいい」くらいの強さでやってみよう。反動をつけずに、伸びにくい部分を重点的にじわーっと伸ばしていくのが効果アップのこつだ。
おすすめは、お風呂に入った後、体が冷め切らないうちに、ふとんの上で行うこと。筋肉が温まっていると、伸びやすいからだ。
胸まわりの筋肉がほぐれて呼吸が深くなってくると、眠くなるかもしれない。その場合は、途中で寝てしまってもいい。試した人からは、「寝起きもよくなった」、「いい姿勢を保ちやすくなった」という声も聞かれるという。
寝つきが悪い、朝起きたときに疲れが取れていないときは、眠りが浅くなっている可能性がある。寝る前のストレッチは、眠りを深くするのにも役立つ。
マッサージを受けたとき、気持ちがよくなってあくびが出たり、寝そうになったりしたことがあるはず。体の凝りがほぐれてくると呼吸に関係する筋肉もゆるみ、呼吸が深くなる。すると、リラックスした時に働く副交感神経が優位になるので、体の余計な力が抜けて、眠る準備に入りやすくなる。あくびが出たら、副交感神経が活性化してきた証拠。
体が十分にリラックスすると血流もよくなるので、寝ている間にも栄養や酸素が全身にいきわたり、老廃物の排出も促進されて疲労回復も早まる。
ストレッチを毎日続けると、年齢に関係なく体の柔軟性はアップする。体が柔らかいとしっかり寝返りも打てるので、骨格のゆがみも整えられていく。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2011年10月8日掲載記事を基に再構成]
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