DNXベンチャーズ、「シード」向け30億円ファンド
ベンチャーキャピタル(VC)のDNXベンチャーズ(東京・港)が創業初期のスタートアップ向けに30億円規模のファンドを創設した。成長期の企業に投資する約330億円規模の既存ファンドに加えて新たにファンドを設けることで、創業初期のスタートアップへの投資を強化する。
新たなファンドの名称は「DNX Seed Fund(シードファンド)」。同ファンドにはデジタルホールディングス(HD)や日本政策投資銀行グループ、大手システムインテグレーター(SIer)などが出資した。既に目標金額の半分程度を集めた。年内にも30億円の調達を目指す。
デジタルHDなどの有限責任パートナー(LP)には、ファンドから投資したスタートアップを紹介し、LPによるスタートアップの買収を支援する。DNXベンチャーズの倉林陽・日本代表は「新興IT(情報技術)企業ではスタートアップの買収が一般的になってきた。デジタル時代の経営で必須のアプローチだ」と指摘する。
一方でスタートアップ買収についての「ノウハウが少ない」として、ファンド運営を通じて「LPを支援したい」(倉林日本代表)。米国では新興企業を中心に、事業会社内にスタートアップの買収を担う「Corp Dev(コープ・デブ)」と呼ばれる部門が存在する。DNXベンチャーズは国内LPのコープ・デブを支援し、新興企業のM&A(合併・買収)を促す。
シードファンドではBtoB(法人向け)の事業を展開する国内のスタートアップに、上限5000万円をめどに投資する。対象は事業を本格的に開始する前にあたる「シード」の段階のスタートアップ。既に不動産管理ソフト開発のヤモリ(東京・渋谷)など6社に投資した。
これまでも成長期の「シリーズA」向けのファンドに「シード」のスタートアップへの投資枠を設けてきたが、あらかじめ金額を設定していたため「シード投資が途切れてしまう懸念があった」(倉林日本代表)。新たに専用ファンドを設けることで「シード」段階からの投資を積極化する。シードファンドで出資した企業には「シリーズA」以降に既存ファンドからの追加出資を検討する。