商品先物とは 将来の価格確定、変動リスクを回避
キソから!投資アカデミー 商品②
原油や貴金属、穀物といった国際商品は、世界の政治経済、気候や自然災害などの要因で大きく価格が動きます。国際商品は数カ月後、時には数年後に売買することもあります。その時の価格次第では大きな損が生じかねません。そんな価格変動リスクを回避する仕組みが商品先物です。
商品先物は将来のある時点で売買する商品の価格をあらかじめ確定します。先物取引所が決めた商品の品質基準や売買単位、受渡期日といった規格に沿って、取引されています。
たとえば、米国の大豆農家が1年後に売る大豆の価格を確定したいとします。その場合はシカゴの先物取引所に、1年後に決済期限を迎える先物の売り注文を出します。注文成立時の先物相場が1ブッシェル(大豆の場合27.2キログラム)あたり10ドルなら、売却価格も10ドルで固定されます。
決済期限を迎えたら、指定の場所で大豆を渡し、売却代金を得ます。先物取引で売値を固定しているので、その時の現物相場が5ドルまで下がっていたとしても、5ドル分の損を避けられます。逆に現物相場が15ドルまで上がった場合は5ドル分のもうけを逃すことになりますが、想定外の損は生じません。
1年後に買う予定の商品が値上がりしそうな場合、その商品の先物を買っておきます。同じように値上がりを予想する人が多ければ、先物を買いたい人が増え、先物相場も上がります。1年後に現物価格が上がっても、先物を反対売買で売り戻し、差益を得ることで購入費用の増加を相殺できます。
商品先物取引では必ずしも決済期限を待つ必要はありません。売り注文を途中で買い戻す、または買い注文を売り戻す反対売買で差金を決済する方法もあります。商品先物取引のほとんどが、この差金決済です。商品の受け渡しが要らないため、差益だけを求める機関投資家、ヘッジファンドなども参加できます。商品先物市場には投資や投機のマネーが多く入り込み、時に相場を大きく動かす要因となっています。
米先物取引業協会(FIA)によると、2022年の売買高(農産物、エネルギー、金属の合計)は約60億枚(枚は最低売買単位)と、10年間でおよそ2倍に膨らみました。供給制約や天候不順を背景に世界的にインフレ圧力が強まり、商品市場への注目度が高くなった結果です。
将来の売買を扱うという性質上、商品先物取引の参加者は、常に先々の出来事を予想して注文を出します。商品先物の値動きには、いわば市場参加者の「未来予想」が反映されるため、経済の先行きを判断する材料として注目を集めます。
商品先物は証拠金という担保を差し入れることで、自己資金よりも大きな取引ができます。読みが当たれば大きな利益を得られますが、想定と逆の動きをした場合は巨額の損失を出す恐れもあります。取引を始める場合は、ハイリスク・ハイリターンであることを理解する必要があります。不慣れな投資家は上場投資信託(ETF)などを通じて売買するのも選択肢の一つになるでしょう。