PER(株価収益率) 収益面から割安さを判断
キソから!投資アカデミー 株式⑪
株価が割安か割高かをどうすれば判断できるでしょうか。利益の規模や発行済み株式数の異なる企業の株価を、いくつかの指標で比較する手法があります。では実際に株価水準を測るのに有効な投資尺度を見てみましょう。
まずは代表的な指標が「PER」(株価収益率)です。株価を1株当たり純利益で割って求めます。例えば、トヨタ自動車の2023年3月期の1株当たり連結純利益の見通しは173.58円で、2月21日の株価は1890円。予想PERは10.88倍、つまり予想1株利益の11倍近くまで買われているわけです。
PERは何倍がよいと決まった水準があるわけではなく、その企業の過去の推移や同業他社などと比べて判断します。足元でのライバルメーカーの予想PERと比べると、ホンダ(8.1倍)やマツダ(5.3倍)より高く、日産自動車(13.5倍)、スズキ(11.6倍)よりは低いです。海外まで目を広げると、電気自動車(EV)の生産を手掛ける米テスラのPERはQUICK・ファクトセットによると60.8倍。日本の同業をはるかに上回ります。
PERを比べる際には、将来の事業見通しや成長性を考慮する必要があります。成長力のある企業であればPERが高くても必ずしも割高とは言い切れませんし、将来性の乏しい企業は低PERでも割安ではない場合があります。また、「重厚長大」型企業とネット関連企業など、業種や事業特性の違いによって差が出ることにも注意しなければなりません。
大規模な金融緩和などで株式市場に資金が流入すると、業績の改善以上に期待感から株が買われるため市場全体でPERが上昇します。新型コロナウイルス禍で世界的に緩和が進んだ2020〜21年にはPERの上昇を通じて株価が高騰しました。逆に、金融引き締めが始まるとマネーが市場から逃げ出し、PERの低下によって株価が下落しました。
PERの利用法はこれだけではありません。PERの計算式を逆にして1株当たりの純利益を株価で割ると、益回りが求められます。純利益を全て株主に渡したと仮定して、現在の株価で投資すると何%の利回りになるかを示します。益回りはPERの逆数になり、PER20倍なら5%、25倍なら4%です。
この益回りを長期金利と比べることで、株式投資と国債など債券投資のどちらが魅力的か判断材料になります。日経平均株価ベースの予想PERは13.1倍で、益回りは約7.6%。足元では物価の上昇や日銀の政策修正観測などで金利の先高観が高まっており、今後の投資判断にも使えそうです。
日本は企業と銀行などによる株式持ち合いの時代が長く続き、PERが欧米に比べ高止まりしていました。その後持ち合い解消が進み、PERが欧米並みに低下したことで、投資尺度としてPERの有用性が高まったとの見方もあります。様々な企業のPERを比較してみるとよいでしょう。