自分のiDeCoはいくら? 表示スタートもハードル高し
知っ得・お金のトリセツ(96)
良いニュースと悪いニュースが1つずつ。10月からの「全員iDeCo(個人型確定拠出年金)時代」を機に、これまで実質的に門戸が閉ざされていた企業型DCに加入する会社員に対し「あなたがiDeCoに入るとしたら毎月掛け金として出せる額は◎万円です」という具体的な額が企業型DCの加入者サイトに記載されるようになった。素晴らしい。良いニュースだ。ただし残念ながら悪いニュースも。たどり着くまでのハードルは相当高い……。
iDeCoによる節税額=自分の税率×拠出額
まずは基本のおさらいから。自分で運用し自分の老後に備える私的年金であるiDeCoは別名「節税の王様」。運用のリターンが仮にゼロだったとしても、iDeCoにお金を回すだけでその時点で着実に享受できる節税効果がある。だからお財布の許す限り、マックス拠出額を狙うのがiDeCoの正しい使い方だが、10月から参加可能になった会社員のマックス額は月2万円か月1.2万円(確定給付企業年金=DB併用の場合)のどちらか。計算上、所得税の税率が20%の人(住民税は一律10%)が月2万円出せば本来払うべき税金が年7万2000円も少なくて済む。年末調整を経て戻るのが基本なので、多めになる12月分のお給料を無意識に費消せず取り分けておくのが賢い使い方だ。
いくら出せるかは企業型DCの会社掛け金次第
「じゃ2万円ね」「うちはDBもあるから1.2万円だ」――とシンプルな結論にならないのが残念なところ。もう一つ条件をクリアする必要がある。企業型と個人型(iDeCo)、2つの確定拠出年金には合算の非課税枠も存在する。月5.5万円か2.75万円(DB併用の場合)だ。要は企業型DCの会社掛け金の額次第で最終的な自分のiDeCo予算が変わってくる。では会社掛け金の額はいくらか?
即答できればそれでいい。だが、企業型DCのあり方は会社ごとにバラエティーに富み年齢や社歴に応じ年ごとにも変わりうる。確実な把握のためにお役立ちなのが運営管理機関が整備している加入者サイトだ。もともとの企業型DCの情報に加え、10月以降はiDeCo関連の情報も加えられたと聞き、サイトの「マイページ」を訪れた。
DCの加入者サイトに明記されたはずだが…
この時点でちょっぴり不満ではある。「あなたのiDeCo予算はここを見ればわかるようになりましたよ~」と関係各所からの大々的な宣伝がなぜない? とはいえありがたい改修には違いない。自分の数字を拝もうと、サイト内を右往左往すること20分。次第に眉根が寄り、鼻息が荒くなってきた。違う、ここにもない、ここも違う。そして……。
「こ、ここか~ッ!」。思わずうめいてしまった。正解は運営管理機関のサイトから、さらにレコードキーパー(記録関連業務)のサイトに飛んだ先にズラリと並んだメニューから「基本情報の照会」を選びさらに「拠出情報照会」に進んだ先の最下部にひっそりと棲息(せいそく)していた。「隠れているのか……」
レコードキーパーに応じ4パターン
全員がそうだとは限らない。見え方のやや異なる人もいるはずだ。とはいえ大きくは4パターンに集約されるはず。日本にある4大レコードキーパーのどれを採用しているか次第だ。すなわち日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー(JIS&T)、損保ジャパンDC証券、日本レコード・キーピング・ネットワーク(NRK)、SBIベネフィット・システムズ(SBI)の4社だ。
なにせ10月から始まったばかりの改革。「いずれの会社も鋭意改修中で次第に使い勝手も向上する予定」(厚生労働省)なので、目くじらを立てずに待ちたい。それにしても普通は「運営管理機関とはなんぞや?」「そこから委託するレコードキーパーとは?」からしてその違いが分からない。iDeCoも、そしてNISA(少額投資非課税制度)も、なにも「資産所得倍増計画」と振りかぶらなくても、現行制度・システムの使い勝手を個人目線に立って良くするだけでそこそこ「貯蓄から投資へ」お金が流れる気もする。
マネーのまなびLive 「全員iDeCo時代」のお悩み解消! あなたの疑問に答えます!
https://www.youtube.com/watch?v=ByGd7SL0nb4
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1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
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