資源国通貨とは 原油・金属価格が変動要因に
キソから!投資アカデミー 為替⑧
今回はドルやユーロといった主要国通貨に次いで人気が高い通貨を紹介しましょう。原油、鉄鉱石などの天然資源を豊富に産出する国の通貨です。カナダドルやオーストラリアドルが代表例で、投資の世界では「資源国通貨」と呼ばれます。
資源国は自国でとれた資源を輸出して収入を得ます。一般に資源価格の上昇は、製造業のコストやガソリン価格を押し上げ、景気の悪化を招く要因となります。一方、資源国にとって資源高は収入を増やすメリットもあります。
2022年はウクライナ危機で世界的な原材料不足が意識されました。国際商品の価格動向を示すリフィニティブ・コアコモディティーCRB指数は、6月に一時、約11年ぶりの水準まで上昇しました。資源国通貨は輸出が増えて景気が良くなるとの連想から、そうでない国の通貨に比べて堅調に推移する場面がありました。
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通貨の総合的な実力を示す「日経通貨インデックス」は22年6月に一時、カナダドルが21年末に比べ3%、豪ドルが同5%上昇しました。
資源国は経済成長によるインフレリスクを抑えるため、政策金利を高めに設定する傾向があります。高金利に引かれて資源国通貨を買う投資家も多いとみられます。
たとえばカナダの政策金利は23年2月時点で4.5%、豪州は3.35%、ブラジルに至っては13.75%あります。日本は金利水準が低いため、資源国通貨を外国為替証拠金(FX)取引や外貨預金などの形で保有する個人投資家も多いようです。
注意が必要なのは、こうした国の通貨は取引規模が小さいことです。22年4月時点で国際決済銀行がまとめた外国為替取引に関する調査を見ると、通貨別の取引シェア(全体で200%)は米ドルが88%、ユーロの31%が続きます。豪ドルとカナダドルはそれぞれ6%、ブラジルレアルは1%に過ぎません。
資源安になれば、巨額の資金を運用するヘッジファンドなど一部の投資家の売りによって相場が下がるリスクがあります。金融危機や景気不安に陥ると、高金利につられて流入したマネーも運用リスクを避ける目的で手早く引き揚げられる傾向にあります。
為替手数料が高い点も要注意でしょう。円を元手に外貨預金を始める場合の手数料は、三菱UFJ銀行のインターネットバンキングで、米ドルが1米ドル当たり25銭です。豪ドルは1豪ドル当たり50銭と、米ドルの2倍の手数料がかかります。
外貨で運用して円に戻す際も手数料がかかります。それを上回る金利収入や、相場上昇による為替差益を見込めるか――。じっくり考えて判断する必要があります。