債券格付けと利回り 高い格付けほど利回りは低く
キソから!投資アカデミー 債券・金利⑯
格付けは、企業の発行する社債などの利払いや償還の確実性を示す尺度です。格付けが低くなるにつれて償還できなくなるリスクが高まり、倒産すれば社債投資家は損失を被ることになります。このような状況をデフォルト(債務不履行)と呼びます。
格付け会社ではデフォルトについて、(1)会社更生法や民事再生法など倒産法の適用申請といった法的な破綻、(2)社債の利払い停止など債務不履行、(3)債権放棄や債務株式化など債権者の不利益となるような債務の条件変更――などと定義しています。企業がデフォルトに陥る確率をデフォルト率といいます。
格付けの違いでデフォルト率はどの程度変わるのでしょうか。米格付け会社S&Pグローバルの場合、5年前に最上位のトリプルA格だった企業がその後の5年間でデフォルトに陥った確率はわずか0.34%、投資適格の最低ラインであるトリプルBの企業で1.48%でした。
これに対し「投機的水準」とされるダブルBのデフォルト率は6%超、シングルBでは16%台と大幅に高くなります(データはいずれも2021年時点、世界の事業会社を対象)。
格付けはその企業の財務状況だけでなく、事業リスクも勘案して決まります。そのため電力会社のように収益が安定しており事業リスクの小さい業種は、相対的に格付けが高くなります。格付けが高いほど安全とみなされるので、高格付けの企業の社債ほど利回りは低くなります。
QUICKによると、格付投資情報センター(R&I)で格付けがダブルAの5年物社債のスプレッド(国債に対する上乗せ金利)は平均0.34%程度です。トリプルBでは1%程度となっています(いずれも3月8日時点)。スプレッドは格付けだけでなく、長期金利や足元の景気動向も影響します。
社債そのものを売買せずに、信用リスクのみを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)という取引もあります。CDSプレミアムは社債の利回り上乗せ幅とほぼ同じで、企業の信用力の変化に敏感に反応します。
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