キャッシュレス決済普及のインドネシア、日本との違いは
FPキャスターのマネー手帳(26)
「おままごと 慣れた手つきで Pay払い」
これは、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)の「くらしとお金のFP川柳コンテスト2024」の最優秀作品です。今月4歳になる娘もピッとカードをかざすまねをよくします。地域差はありますが、現金を持たずに外出しても不自由することがなくなってきましたよね。
今年4月には、スマートフォン決済アプリや電子マネー口座に給与を支払う仕組みであるデジタル払いが解禁され、ソフトバンクグループ10社が先陣を切って9月に始めました。将来的には給与をデジタルで受け取るのが当たり前になるのでしょうか。
日本のキャッシュレス決済比率は4割
経済産業省によりますと、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%。キャッシュレス決済の普及率は堅調に伸びてきていますが、依然として日本では現金決済の割合が低くありません。
インドネシアでは電子マネーで献金
一方で、インドネシアはというと、ジャカルタに関してはキャッシュレス決済がかなり普及しているように感じます。大型ショッピングモールやレストランはもちろん、個人商店や昔ながらの屋台などでも多くがキャッシュレスでの支払いが可能です。また、モスクや教会には2次元バーコードが貼られた箱や席があり、コードを読み取って電子マネーで献金するそうです。身の回りで現金が必要な場面というと駐車場代くらいしか思いつきません。
世界各国でキャッシュレス決済が急速に普及したきっかけの一つが新型コロナウイルスの流行ですが、インドネシアの場合は、これに加えてこの国ならではの理由がいくつもあるように思います。
クレカ比率が高い日本、コード決済などが多いインドネシア
日本のキャッシュレス決済の内訳は、クレジットカードが83.5%と圧倒的な割合を占め、コード決済(8.6%)、電子マネー(5.1%)と続きます。一方、インドネシアにおけるキャッシュレス決済は、コード決済や電子マネーの利用が多いのが特徴です。日本のPayPayやLINEペイ、楽天ペイなどと同じように、インドネシアにもGoPayやDANA、OVOなどのキャッシュレス決済アプリがあります。
インドネシア銀行によりますと、23年のインドネシアの電子マネー取引額は約457兆 7300億インドネシアルピア(約4兆4000億円)に達し、14年と比較すると約140倍になったそうです。なぜこれほどまでに電子マネーが浸透したのでしょうか。
インドネシアのクレカ保有比率はわずか6%
インドネシア総合研究所によりますと、インドネシアでは銀行口座を持っていない人が人口の36%おり、クレジットカードの保有率はわずか6%です。そんな中、ダウンロードするだけで送金やオンラインショッピングなどができるキャッシュレス決済アプリは非常に利便性が高く、生活の質を高めてくれるものだったのではないでしょうか。インドネシアの決済アプリは銀行口座やクレジットカードにひもづけることもできますが、コンビニのレジなどでチャージすることもできます。
2次元コード一元化でキャッシュレス化が加速
また、2次元コードを一元化するために導入されたQRIS(クイック・レスポンス・コード・インドネシア)もキャッシュレス化を加速させました。インドネシアでは、1つの2次元コードに対し、どのキャッシュレス決済サービスを使っても決済ができるのです。日本のように、自分が使っているサービスのQRコードがお店にないためコード決済ができないということがなく、大変便利な仕組みだなと感じます。
その他にも、インドネシアは全人口に占める若者の割合が高いことや、インドネシア紙幣の最高額面が日本円で約1000円と少額なので、それなりの金額を持とうと思うとかなりの枚数になる点、さらには、金銭の盗難が少なくないことなどもキャッシュレス決済が生活に根付いた要因なのではないかと思います。
シンガポールやマレーシアなどと越境決済も
インドネシアは、前述のQRISを使ってシンガポールやマレーシアなどと越境決済ができます。例えば、インドネシアの人がシンガポールの飲食店で2次元コードを読み取ると、現地通貨で価格が表示され、普段使っているインドネシアの決済サービスで支払いができるというものです。日本とはまだ実現していませんが、運用を検討しているとのことです。
メインとなるキャッシュレス決済方法も国の事情もインドネシアと日本とでは大きく異なりますが、両国ともに今後もキャッシュレスの状況はまだ進化し、便利になっていくものと思われます。こちらでの生活の中で何か変化などあればまたお伝えしたいと思います。
慶応義塾大学経済学部卒。富山テレビ放送にアナウンサーとして勤務後、「TBSニュースバード」のキャスターとして東証アローズからの場況中継を経験。その後、「TOKYO MXニュース」のキャスターを経て、2018年6月から「日経CNBC」キャスター。24年1月からインドネシア在住。ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新し、2024年には新NISAが始まります。マネーについて改めて学びたい人も多いのではないでしょうか。このコラムではファイナンシャルプランナー(CFP)資格を持つフリーキャスターの有地佐哉香さんが、知っておくべきマネーにまつわるトピックを解説します。