非鉄金属とは 銅やアルミニウム、値動きに景気動向
キソから!投資アカデミー 商品⑧
橋やプラントなど大規模な施設から電子部品まで、幅広い分野に使われる銅やアルミニウムなどの非鉄金属は生活に欠かせない存在です。値動きには景気動向が表れます。非鉄の種類と価格の決まり方を見ていきましょう。
主な非鉄金属の用途や年間消費量を見てみます。銅は電力や通信向けの電線のほか、空調機や電子部品、建材など非常に用途が広範です。非鉄金属のなかでも、値動きは世界の景気を敏感に映し出すといわれ「ドクター・カッパー」という異名を持ちます。
2021年の世界消費量は約2485万トンで、このうち約半分を最大消費国の中国が占めます。日本は約91万トンです。主な生産国はチリやペルーです。
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アルミニウムは住宅サッシなどの建設資材、鉄道車両、自動車の一部にも使うほか、缶や電子部品の材料になることもあります。年間消費量は21年が約6920万トンで消費の約6割を中国が占めます。日本の消費は約174万トンでした。生産量は中国が首位です。
亜鉛は鋼材をさびにくくするためのメッキ加工向けが多いです。メッキ加工した鋼材は自動車や鉄橋、プラントなどに使います。鉛は環境問題の観点から用途が限られつつありますが、リサイクルが可能な蓄電池向けが中心です。
ニッケルとすずは比較的消費量が少ないものの、重要な用途があります。ニッケルはステンレス鋼材の副原料として用い、鋼材をさびにくくする役割があります。電気自動車(EV)の電池材料としても注目されています。すずは電子部品の接合に欠かせないはんだの原料になります。
ここにとりあげた6種類の非鉄金属はロンドン金属取引所(LME)という市場で取引されています。LMEは19世紀後半に銅とすずの取引から始まりました。歴史的経緯から、LMEの取引価格が世界の非鉄価格の指標になっています。
特に値決めでよく使うのが「3カ月先物価格」です。かつて、銅鉱石産出国のチリ、すず鉱石がでるマレーシアからロンドンへの輸送に3カ月程度かかったことに由来するといわれています。
LMEではリングと呼ばれる立会場での取引が主流で、オンラインの取引も新型コロナウイルス禍をきっかけに広がってきました。実際にはLMEのトレーダー同士や顧客とトレーダーの取引も取引として認められるため、24時間取引が可能です。
ニッケルの取引に関し、LMEでの取引を避ける動きも出ています。22年3月に取引で多額の損失を抱えた中国企業が買い戻した結果、相場が急騰。LMEは取引停止と約定の取り消しを迫られました。
市場の混乱で投資家のLMEへの不信は高まっています。中国の輸入業者の一部が生産者に対し、ニッケル価格の指標をLMEから上海期貨交易所(SHFE)に移行するよう要求する動きも出ているようです。
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