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自分の信用スコアは? 開示始めたCIC、8億件データ保有

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国が信用情報機関として指定するシー・アイ・シー(東京・新宿、CIC)は消費者の金融取引状況を指数化し、個人に提供するサービスを始めた。日本でなじみの薄い「信用スコア」を提供する狙いは何か。斎藤雅之社長に聞いた。

――11月28日から信用スコア(信用指数)と算出理由を消費者に開示するようになりました。どのような反響がありましたか。

「CICはこれまでも金融機関ごとの契約内容や支払い状況といった取引履歴を開示してきた。2023年は約37万件あった。指数は28日から始めたため比較はできないが、申請ベースでみると初日が通常の10倍、足元も5倍だ。信用情報を初めて請求したという人も多い」

――なぜ今、信用スコアを始めたのでしょうか。

「構想は10年前からあった。だが2つの理由で事業化に踏み切れなかった。ひとつは消費者の理解だ。人間の信用力を指数化することに対する社会の不安は今より大きかった。もうひとつは収益性の問題だ。CICに加盟するクレジットカード会社などからのニーズはそれほど高くなく、不採算事業になる可能性があった」

「しかし、ここ数年で消費者のお金や信用に対する意識が変わった。スマホアプリやキャッシュレス決済の普及でお金の動きが見える化され、自分の信用情報を気にかける人が増えた。金融機関でもデジタル化が進み、与信におけるデータの重要性が増した。22年春に(信用スコアと算出理由を提供する)『クレジット・ガイダンス』の事業化を決断し、専門チームを立ち上げた」

「カード会社や消費者金融など約800社が加盟するCICは、法律に基づく機関で8億件を超える信用情報を保有する。これまでは加盟社から預かった信用情報をそのまま開示するだけだった。膨大なデータを蓄積していながら、それらが財産であることに気づかなかった。信用情報を有効活用しないこと自体が損失だと考えた」

斎藤 雅之氏(さいとう・まさゆき)76年(昭51年)一橋大商卒、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。11年オリエントコーポレーション社長、16年会長。17年シー・アイ・シー取締役。21年6月から現職。埼玉県出身。

――25年4月からはカード会社などの加盟社が消費者の信用スコアを照会できるようになります。今でも契約内容や返済状況の情報を照会できますが違いはありますか。

「現在照会できるのはいわば『生データ』だ。A社との契約期間はどのくらいか、B社からの借入額はいくらか、という取引事実のみを記載している。加盟社の多くは『未払い』や『残高』などの項目を与信に活用しているが、それらは照会した情報のほんの一部に過ぎない。指数にはこうした項目はもちろん、これまで与信に活用しづらかった信用情報を織り込んでいる」

「『生データ』のほとんどは、加盟社が照会した時点の数字である一方、指数は一定期間の取引をもとに算出する。過去の取引からの変化を反映している分、データの信頼度は高くなる。与信精度は元データの品質と量に大きく左右されるため、指数を使えばより正確な与信ができる」

「当面は与信結果を補足する参考情報として指数を活用する加盟社がほとんどだろう。『指数の有効性を確認して基幹システムに組み込みたい』と話す加盟社もいる。システムの規模や仕様にもよるが、指数を組み込むことで与信コストを削減できると思う」

――信用スコアの開示により、新たな金融サービスが生まれる可能性はありますか。

「与信モデルの開発コストがネックで、事業化に踏み切れない新興企業は多い。指数を活用すれば、精度の高い与信モデルを低コストで構築できる。優れたオルタナティブ(代替)データを持つフィンテック誕生の後押しになる」

――海外では信用スコアが賃貸契約など日常的に使われています。信用力が指数化されることに懸念もあります。

「海外とは異なり、CICは指数の用途を加盟社の与信に限定している。ただ消費者の使い方は制限できない。指数は使い勝手がよい分、意図せぬ使われ方を懸念している。例えば『信用スコアを持ってきたらサービスを優遇する』という企業が出てくる可能性もある。消費者にはこれまで以上に強い文言で注意を呼びかけたい」

――開示手続きがなお複雑だという指摘もあります。

「よりシンプルな仕組みにしたい。現在は受付番号を取得するために専用ダイヤルに電話をかける必要がある。インターネット開示の際にも一度電話しなければならない。また取引記録には(未払いを意味する)『異動』などの専門用語の記載が多く、消費者には意味が分かりにくい。誰もが理解できる表現に改めたい」

「信用レベルを定点観測できる仕組みも必要だ。頻繁に開示したい人向けに、指数などの信用情報を定期配信するサービスを検討している。開示手続きを毎回する手間が省ける。開示手数料の支払い手段の多様化も進める。現在は一部のクレジットカードなどに限られているが、24年度中にもQRコード決済に対応する方針だ」

聞き手から 格差生む懸念も


消費者はこれまでも自分の信用情報(クレジットヒストリー)をCICに開示請求できた。クレジットカードの利用状況やローン残高だけでなく、スマートフォンの分割払い料金の支払い状況も記載されている。

こうした事実は一般的にあまり知られていなかった。新たに信用スコアという指標が誕生し、信用情報に対する消費者意識が高まれば、カードの支払いの延滞や無理な借り入れの未然防止につながる。

もっともスコアの独り歩きには注意が必要だ。海外ではスコアのない人がカードを作れなかったりローンを利用できなかったりすることが社会問題になっている。日本も与信の精度が高まることで消費者間の格差が広がる可能性がある。

CICは信用スコアを始めるにあたり、外部有識者で構成する消費者委員会を設置した。同委員会の助言・評価をもとにサービスの品質を検証する。日本社会におけるスコアのあり方も考える必要がある。(古田翔悟)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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