NewsPicks運営会社、著作権侵害で謝罪 報道機関に補償
ニュースアプリ「NewsPicks(ニューズピックス)」を運営するユーザベースは29日、ニューズピックスが報道機関などのメディアの著作権を侵害する事例があったことを認め、謝罪する声明を公表(https://corp.newspicks.com/info/20240229)した。報道機関と補償に向けた交渉をする意向も示した。
ニューズピックスは2013年にサービスを開始した。国内外100以上のメディアの記事を転載してまとめ読みできるサービスで、「キュレーションメディア」と呼ばれる分野で代表的な存在だった。
同社は声明で「利用許諾を得ていない一部コンテンツを掲載したことに関し、著作権侵害が認められた」と述べた。23年秋に日本新聞協会から、著作権侵害の恐れについて指摘されてから精査をしたという。
著作権侵害を認めたのは「ビジネス」などカテゴリーごとの記事や、まとめ読み記事などにつけられた「写真」が中心だ。
報道機関が著作権を持つ写真をニューズピックスに無断転載したことが、著作権侵害に当たると認めた。
無断転載時に写真を編集したことでも「同一性保持権の侵害が認められた」といい、報道機関など著作者の人格権を侵害していたと同社は説明している。
同社は24年2月から、許諾を得られたメディアのコンテンツのみ掲載する方針に切り替えた。利用許諾の得られなかったコンテンツは削除するという。
著作権侵害に伴う金銭などの補償について、同社は「(メディア側と)誠実に協議し対応する」と表明している。
日本新聞協会の中村史郎会長は29日、「報道コンテンツは貴重な知的財産であり、無断利用は許容できない。報道各社が定めた方法以外で利用する場合には、許諾を得て契約を結ぶことが原則だ」とのコメント(https://www.pressnet.or.jp/statement/broadcasting/240229_15370.html)を公表した。
「対価なし」ビジネスモデルに限界
キュレーションなどデジタルプラットフォームにおけるコンテンツの利用を巡っては、公正取引委員会が2023年に報告書をまとめていた。プラットフォーム側に対し、メディアに適切な対価を支払うべきだという考え方を示していた。
キュレーションメディアやSNSなどは、インターネットで配信されている報道機関の記事や写真などを客寄せ道具の一つとして活用し、利用者層を拡大してきた。
配信契約を結んだりコンテンツの利用許諾を取ったりする場合もあるが、無断で写真や見出しなどを転載して利用者を集める「タダ乗り」に近いケースもあった。
既存メディアの収入源が急激に縮小し、生成AI(人工知能)が爆発的に普及するなかで、コンテンツの作り手の持続可能性が日本だけでなく欧米でも課題になっている。
オーストラリアやカナダでは、適正な対価支払いに向けてメディアと交渉することをプラットフォーム企業に義務付ける法律が施行されている。フランスでも知的財産法を根拠として、政府がコンテンツの対価支払いをプラットフォーム側に求めている。
コンテンツはデジタル情報空間を形成する重要な要素だ。その作り手が適正な対価を得られない状況が続けば、情報空間全体の健全性も危うくなる。「コンテンツはタダ」を基本としてきたプラットフォーム側も、ビジネスモデルの見直しを迫られている。
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