立憲民主党、「反撃能力」容認で検討 維新・国民に続き
安保政策、野党試す
立憲民主党は政府が国家安全保障戦略など防衛3文書を改定するのを前に独自の安保政策をまとめる。日本維新の会や国民民主党に続き、相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の容認を検討する。責任政党として現実的な政策を示す狙いがある。
政府は日本を取り巻く安保環境の変化を受けて12月中旬に国家安保戦略など防衛3文書を改める。立民や維新、国民民主は3文書に野党の意見を反映させるため党内で議論している。
立民は玄葉光一郎元外相が会長を務める党外交・安保戦略プロジェクトチーム(PT)の幹部を中心に議論を重ねる。PTは11月24日から党所属の全議員が参加可能な自由討議を始めた。
同日は提言の柱として安保環境の認識や反撃能力の保有、防衛費の増額など7項目の論点を示した。意見を踏まえて幹部が提言案の詰めの調整に入る。
反撃能力は専守防衛や憲法の規定の範囲で保有を認めることを検討する。玄葉氏は「真の抑止力たり得る反撃能力は排除しないで議論したい」と述べる。サイバーセキュリティーの強化や国民の保護の体制整備なども打ち出す方向だ。
維新は既に考え方を整理した。反撃能力について「一定条件下において認められるのが当然」と記す。専守防衛の再定義なども提唱する。2022年度第2次補正予算案が成立した後、馬場伸幸代表が岸田文雄首相に直接申し入れる。
国民民主も反撃能力の保有を認める。「周辺諸国のミサイルの開発、配備の脅威から日本の平和と安全を守る」と主張する。
サイバー攻撃を未然に防ぐ「アクティブ・サイバー・ディフェンス(積極的サイバー防衛)」に関して「実施体制を整備すべきだ」と盛る。
共産党は反撃能力は違憲と訴え、防衛費増額も中止を求める。小池晃書記局長は「軍事優先の国家づくりをめざすものだ」と批判する。
各党が示す安保政策は野党が政権交代可能な政党になりうるかの試金石となる。
09年に政権交代して発足した鳩山由紀夫政権は米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設先を巡って迷走し、日米関係が悪化したことが退陣の一因となった。非現実的といえる政策を掲げたため自滅したとの見方が多い。
米欧など海外の主要国では政権交代しても外交・安保政策の骨格は維持する傾向にある。
オーストラリアでは今年5月に9年ぶりとなる労働党政権が発足した。アルバニージー首相はモリソン前首相が打ち出した対中強硬路線を引き継ぐ。就任直後に来日し、日米豪印の協力枠組み「Quad(クアッド)」の首脳会議に出席した。
台湾有事は絵空事ではない。野党の無責任な政策にはこれまで以上に厳しい目が注がれる。
野党3党、補正予算案の賛否割れる
立憲民主、日本維新の会、国民民主の3党は2022年度第2次補正予算案の賛否を巡り方針が割れた。11月29日の衆院本会議での採決は立民、維新が反対し、国民民主が賛成した。
立民と維新は今国会で法案提出など8項目の連携を掲げ、岸田政権との対決姿勢を示す。補正予算案の対応も足並みをそろえた。立民の泉健太代表は維新について「より政策共闘は深まっている」と強調する。
国民民主は政府予算への賛成をテコに自民、公明両党との政策協議につなげてきた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けた法案の協議は立民、維新とは別に自公との3党の枠組みで進めた。