競争促進、データから通話へ 格安スマホに番号付与諮問
総務省は19日、格安スマートフォン事業者に対する携帯電話番号の直接割り当てに向けた議論を始めた。格安スマホが大手に支払うデータ回線の利用料は低下してきた一方で、通話回線の利用料(卸値)は高止まりしてきた。格安スマホ各社が自前の番号を持てば、卸値に縛られず通話料金やサービスを柔軟に設定できるようになる。
総務省は番号の割り当て要件の一つに携帯基地局の無線免許を持つことを告示で定めている。現在、格安スマホは大手の基地局を利用してサービスを提供しているため、自前の番号を持てず、大手から「090」「080」などで始まる番号を借りている。
総務省は19日、番号の割り当て要件の緩和を情報通信審議会(総務相の諮問機関)に諮問した。年内に答申を出す予定で、早ければ2021年度末の告示改正を目指す。格安スマホから直接割り当てを求める声が出ていた。
菅義偉政権の要望を受けて、NTTドコモのアハモなど大手は、大容量のデータを割安に使えるプランを打ち出した。格安スマホも自前の番号を持てば、卸値に左右されずに通話付きプランの料金を設定でき、大手に対抗しやすくなる。
日本通信の福田尚久社長は「大手に対する価格競争力は極めて重要だ。手話を音声に変換して伝えるサービスなども検討している」と話す。料金競争だけでなく、デジタル技術を使った付加価値の高いサービスの創出が期待できる。
データ回線で会話できる無料通話アプリも普及している。しかしMM総研(東京・港)の横田英明研究部長は「通話サービスは事業者に対する消費者の安心感につながるため、提供していないと他社に比べて見劣りしてしまう」と指摘する。
自前の番号の割り当てを受けるには、他社ネットワークにつなげる交換設備も持つ必要がある。交換設備はソフトウエア化の進展で価格が下がり、数億円規模で済むとの見方もある。自前の番号を持つか、卸値を払って大手から番号を借り続けるかは格安スマホ各社の経営判断となる。
携帯事業者がほかの事業者のネットワークを使用する契約形態には、接続契約と卸契約がある。格安スマホは大手の通話回線とデータ回線をそれぞれ使っており、回線費用は大手に支払うコストの7~8割を占める。
データ回線は算定方式が明確な接続契約を結んでいる。接続は対等な立場にあることが前提だ。自前の番号がないため、通話回線は相対で料金が決まる卸契約が慣行となってきた。大口契約を結べない中小事業者は、卸値が高止まりしやすい。自前の番号を持てば、接続契約を結べるようになる。
総務省が20年6月にドコモに卸値の引き下げを求める裁定を出したことで、大手3社ともに卸値は当時の半額まで下がったとされる。それでもデータ回線のコスト低下が著しく、通話回線のコスト高の改善が競争政策上の課題となっていた。
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