岸田首相「23年に最低賃金1000円」 政労使会議で目標

岸田文雄首相は15日、首相官邸で政府と経済界、労働団体の代表者による「政労使」の会議に出席した。最低賃金の全国加重平均を2022年の961円から23年に1000円へ上げる目標を示した。非正規雇用も含めた幅広い賃上げを訴えた。
「今年は1000円を達成することを含め最低賃金審議会で明確な根拠のもと、しっかり議論いただきたい」と述べた。地域間格差の是正も必要だと強調した。
出席者は中小企業の賃上げへ労務費の取引価格転嫁ができる環境を整えると基本合意した。首相は「業界ごとに実態調査したうえで指針をまとめていく。業界団体にも自主行動計画の改定・徹底を求める」と語った。
最低賃金の前年からの上げ幅は22年に過去最大の31円だった。23年に1000円にするにはこれを上回る必要がある。首相は「この夏以降は1000円達成後の最低賃金引き上げの方針についても議論をしていきたい」とも言及した。
リスキリング(学び直し)や円滑な労働移動といった労働市場改革で「構造的な賃金引き上げ」をめざすと言明した。

官邸で政労使が協議する場を設けたのは8年ぶり。関係閣僚のほか経団連の十倉雅和会長や日本商工会議所の小林健会頭、連合の芳野友子会長らが参加した。春季労使交渉で大企業の集中回答日に開催し、中小企業にも賃上げを波及させる狙いがある。
小林氏は「大企業における賃上げの動きが中小企業や小規模事業者に広がっていくために取引適正化などが不可欠だ」と主張した。首相は「政策を総動員して環境整備に取り組む」と話した。
十倉氏は協議後、首相官邸で記者団に「今年は持続的な賃上げに向けた起点の年となる。これから本格的な交渉を迎える中小企業にも波及していってほしい」と語った。
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賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。