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社長の住所非公開、10月から 起業促進へ個人情報保護

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小泉龍司法相は16日の記者会見で、10月1日から株式会社の登記の際に代表者が希望すれば自宅住所を非公開にできると発表した。「自宅がオープンになってしまうということに対する抵抗感、個人情報保護の観点からの問題提起があった。新たな起業の促進につながることを期待をしたい」と述べた。

会社法は代表者の氏名、住所などを登記事項としている。公正で円滑な商取引が目的だが、経団連などが「プライバシー保護」を理由に非公開を認めるよう求めていた。

2023年12月からパブリックコメントを実施していた。関係する省令を改正し、希望者は市区町村までの記載で済むようになる。当初は6月施行を目指したが、周知期間を求める意見が多く10月に延ばした。

現在は法務局の窓口などで登記資料を閲覧できる。インターネット上でも見ることが可能だ。誰でも簡単に代表者の住所を知ることができ、脅迫やストーカー行為に悪用される懸念が指摘されてきた。

今回の改正を受けて、女性や子どもを持つ人の起業に追い風となりそうだ。子育て地図アプリを手掛けるiiba(東京・港)の逢沢奈菜代表は「小さい子どもを育てる親として住所公開に抵抗感があった」と話す。

SNSで自身を積極的に発信する中、第三者が住所を調べて自宅を特定することができれば子どもにも悪影響が及ぶリスクがあるためだ。法改正によって「心理的な安全性が保たれ、事業に集中しやすくなる」と喜ぶ。

女性向けキャリアスクールを運営するSHE(東京・港)の福田恵里代表は「日本で女性が起業する壁の1つが自宅住所の公開だった。改正はとても嬉しいニュース」と受け止める。SHEでは女性の起業支援も手掛けており「起業家のプライバシーや身の安全が確保できる環境を整備していきたい」と意欲を見せる。

一方日本弁護士連合会などには、悪質商法の被害回復や債権回収のためには代表者の住所公開を維持すべきだとの意見もある。

企業に民事訴訟を起こす場合は本社の住所、届かない場合は代表者の自宅に訴状を送付する。代表者の住所非公開の措置を取っている企業が、登記で記載した場所に本社がないと認められた場合は、登記官が職権で非公開を終了できるようする。

ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者などの住所は法人登記情報をネットで閲覧できるサービス上では公開しない措置が22年9月に始まっていた。被害者らが登記官に申し出ればネットだけでなく法務局で閲覧できる登記も住所を非開示にできる。

内閣官房によると起業を望ましい職業選択と考える人の割合は19年で24.6%だった。中国の79.3%、米国の67.9%と比べて低い水準にある。起業家や経営者のプライバシーへの配慮を通じ、経済の新陳代謝やイノベーションを促す。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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