コロナ下の優待株投資 意識したい5つのポイント
優待達人に聞く コロナ下の投資戦略(上)
この春も株主優待の廃止相次ぐ
経済正常化や企業業績改善への期待が高まる年後半。コロナ後を見据えた相場が動き出す中、今なお揺れているのが株主優待をめぐる企業の対応だ。外出自粛や巣ごもり消費など、これまでにない日常生活の始まりで、大幅に悪化した企業業績。外食や旅行などを中心に、21年2・3月期は赤字決算が相次いだ。それに伴い、株主優待も縮小・廃止の流れが鮮明になった。20年度は廃止が75件、優待新設が48件と、廃止が新設を上回る(野村インベスター・リレーションズ調べ)。この流れは21年度も継続、21年4〜5月の2カ月間も廃止が11件、新設は1件という状況だ。
優待廃止・縮小リスクが顕在化する中にあって、個人投資家は優待株投資にどう向き合えばいいのか。優待株への投資経験が豊富な個人投資家に取材したところ、意識しておきたい「5つのポイント」が見えてきた。
自社製品優待でも油断は禁物
ポイントの1つ目は、優待縮小・廃止リスクのセオリーに変化が起きていること。これまで廃止リスクが高いとみられてきたのは、QUOカードなどの金券類やカタログギフトの優待。調達コストが安い自社製品関連優待は廃止リスクが低いといわれてきた。しかし20年の状況を見ると、自社関連品を提供していた企業の優待廃止が散見される。自社関連品といえども廃止リスクに警戒が必要な状況だ。
2つ目が、優待内容だけではなく、ファンダメンタルズ(基礎的条件)をしっかり見た上で投資判断をする重要性がこれまで以上に高まっていること。コロナ禍の影響が続く中にあっても優待を継続できる「稼ぐ力」と「体力」がある企業を選ぶことが必要だ。
3つ目は、配当政策にも目を配ること。昨今は、株主優待廃止の理由に「株主への公平な利益還元」を挙げる企業が多く、優待を廃止する一方で増配する企業もある。優待内容だけでなく、株主還元施策全体を確認した上で投資判断したい。
割高な銘柄に飛びつかない
4つ目は、株価水準を考えた上で投資すること。魅力的な優待新設や拡充が発表されると、株価が急上昇することがままある。だが、その株価水準で買ってもいい業績なのか、財務内容なのかを見極めることが重要だ。これも投資の基本だが、優待内容につられて高値づかみしないよう、株価水準をしっかりと確認したい。
5つ目が、一部の投資家に人気の「クロス取引」に関する注意点。買いと空売りを組み合わせることで、株価変動リスクを抑えて優待品を受け取るクロス取引では、空売り用に株を借りるための貸株料に加えて、追加コストである「逆日歩」(ぎゃくひぶ)が発生することがある。昨今のクロス取引人気で逆日歩が高くなる例が散見され、優待品と同等額やそれ以上の逆日歩が必要になる場合もある。こうしたリスクがある点に注意したい。
厳しい局面が続く優待投資。だが、こうした環境にあっても優待制度を新設・拡充するなど、優待を通じた株主還元に積極的な企業も存在する。次回は、コロナ下における優待達人たちの有望銘柄選びの視点を紹介する。
(佐藤由紀子)
[日経マネー2021年9月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/7/19)
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