米、対トルコ制裁を発動 ロシア製ミサイル導入で
【イスタンブール=木寺もも子】米国のポンペオ国務長官は14日、ロシア製ミサイルの導入を巡り、対ロシア制裁法に基づく対トルコ制裁の発動を発表した。米国や第三国の企業と金融機関がトルコ大統領府傘下の国防産業庁と取引するのを制限する。北大西洋条約機構(NATO)同盟国に対しては異例の厳しい対応で、両国関係に緊張をもたらす可能性がある。
トルコは2019年7月、ロシアから地対空ミサイル「S400」の搬入を開始した。米国はNATOの防衛機密が流出する恐れがあるなどとして反発していた。ポンペオ氏は声明で「ロシアとの防衛・情報分野での取引は容認しない」として、トルコに対して問題の即時解決を求めた。
今回の制裁で、トルコでは米国や欧州などからの防衛装備品や部品調達が困難になる。同国の防衛産業には大きな打撃だ。制裁ではほかに、国防産業庁トップを含む個人4人について米国内の資産凍結や米国への渡航禁止を定めた。
トルコ外務省は同日の声明で、制裁は「重大な誤りだ」と反発し「必要な対抗措置を取る」とも述べた。
S400はトルコが近年進めていた対ロシア接近の象徴で、米トルコ関係の懸案だった。米国はトルコのS400導入を受け、19年には最新鋭ステルス戦闘機F35の共同開発計画からトルコを締め出した。米議会ではさらに、対トルコ制裁の発動を求める声が強かったが、トルコとの関係を重視するトランプ大統領が消極的だった。
トルコは20年10月に国内で発射実験に踏み切り、米国の反発はさらに強まった。米議会は今月、対トルコ制裁の発動を義務付ける内容を含む国防権限法を可決し、制裁圧力は強まっていた。