WHO、新型コロナ緊急事態宣言終了を発表 3年3カ月
【パリ=北松円香】世界保健機関(WHO)は5日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を終了すると発表した。ワクチンの普及などで死者数が大幅に減ったためで、2020年1月末に始まった緊急事態は3年3カ月で終了を迎えた。今後もワクチン接種などの感染対策を通じた共存が課題となる。
4日に開いた新型コロナに関する専門家の緊急委員会の議論を受けて決めた。緊急委は各地の感染状況を踏まえ、20年1月にWHOが宣言した「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」の終了を勧告した。
WHOのテドロス事務局長は5日の記者会見で新型コロナについて「緊急事態から、他の感染症への対応と並行して(流行を)制御する局面に移った」と指摘した。
各国は既に新型コロナ対策を大幅に緩和している。米国は11日に国家非常事態宣言を解除する方針で、入国時のワクチン接種証明書の提示も不要になる。日本でも8日に感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、日々の感染者数の発表は終了する。
緊急事態が終わっても、新型コロナの感染がなくなるわけではない。WHOは3月に改定したワクチン指針でも高齢者や妊婦、複数の持病を持つ人などは定期接種の対象とすべきだとした。
専門家からはWHOによる緊急事態宣言終了で「各国の対策が緩む」との懸念の声もあがる。今年に入ってオミクロン型の新派生型XBB.1.16の感染者が増えるなどウイルスは常に変化している。
東京医科大学の浜田篤郎特任教授は「現在の新型コロナウイルスは冬に流行する傾向があるため流行を予測しやすいが、別の変異株が広がれば再び流行を予測しづらくなるおそれもある」と指摘する。今後も重症化しやすい型の出現などには注意が必要だ。
WHOは「国際的な公衆衛生上の脅威となり得るあらゆる事象」の報告を各国に義務付けた05年の国際保健規則の改定以降、新型コロナを含めて緊急事態を7回宣言している。長期化するケースもあり、14年に緊急事態を宣言したポリオは今も継続中だ。22年に緊急事態が宣言されたサル痘(エムポックス)も、まだ終了宣言が出ていない。
WHOによると、各国から5月3日までに報告された新型コロナウイルスの死者は累計で692万人に達した。
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