トランプ氏銃撃される 容疑者死亡、20歳男と特定
【ワシントン=飛田臨太郎】米国のトランプ前大統領が13日、東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃を受けた。右耳を負傷したが、命に別条はない。米連邦捜査局(FBI)が暗殺未遂として捜査しており、射殺された容疑者を同州に住む20歳の男と特定した。
共和党のトランプ氏は11月の大統領選で返り咲きを狙っており、現時点では民主党のバイデン大統領と再び対決する。銃撃事件が選挙戦に影響を及ぼすのは必至だ。
発砲音が聞こえたのは演説を開始してから6分が経過したあたりだった。トランプ氏が「我が国で歴史上最悪の大統領が就任し、我が国がどうなったか見てほしい」と語り、不法移民の増加について触れた時だった。
トランプ氏は護衛に抱えられるように車に乗り込み、現場から退避した。支持者に向けて手を挙げる姿は見せた。トランプ氏の顔には血のようなものが見えた。
トランプ氏は事件から2時間半後、自身のSNSに「右耳の上部を貫通する銃弾を受けた。何かがおかしいとすぐに分かったのは、ビュンビュンという音と銃声が聞こえ、すぐに銃弾が皮膚を切り裂くのを感じたからだ」と投稿した。
「米大統領警護隊(シークレットサービス)とすべての法執行機関の迅速な対応に感謝したい。殺された集会参加者の家族と、重傷を負ったもう1人の家族に哀悼の意を表したい」と記した。「私たちの国でこのような行為が行われることは信じられない」と加えた。
米ニュースサイト、アクシオスは、トランプ氏が右耳に受けたのは銃弾ではなく、ガラスの破片だとする関係者の見方を伝えた。
AP通信によると、シークレットサービスがトランプ氏を銃撃した容疑者を殺害した。FBIはトーマス・マシュー・クルックス容疑者と特定した。聴衆の1人が亡くなり、別の2人も重体だという。
トランプ氏の広報担当者は事件後「トランプ氏は元気で、地元の医療施設で検査を受けている」と説明した。米CNBCテレビによると、同氏はその日のうちに施設を出た。
バイデン米大統領はトランプ氏の事件について報告を受けた。ペンシルベニア州のシャピロ知事はX(旧ツイッター)への投稿で、州警察が現場で対応していると説明した。
米下院民主党トップのジェフリーズ院内総務はXに「米国は民主主義国家だ。いかなる政治的暴力も決して許されるものではない」と記した。
共和党のジョンソン下院議長は「平和的な選挙集会におけるこの恐ろしい政治的暴力行為は、この国にはふさわしくない。全会一致で断固として非難されるべきだ」と書き込んだ。
ペンシルベニアは大統領選の激戦州の一つ。共和党のトランプ氏が16年に制し、民主党のバイデン氏が20年に奪還した。「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれ、労働者票の争奪戦となっている。演説会場のバトラーは鉄鋼業で栄えたピッツバーグに近い。
米国では政治家を標的としたテロや暗殺が繰り返されてきた。
1963年にケネディ大統領が遊説先のテキサス州ダラスでパレード中に狙撃され死亡した。68年には、弟のロバート・ケネディ上院議員も大統領予備選の遊説中に銃弾に倒れた。
81年にはレーガン大統領がワシントン市内で演説後、ホテルの車寄せで銃撃される暗殺未遂事件が起きた。胸部に銃弾が命中し緊急の摘出手術を受け、一命を取り留めた。
日本では2022年7月に安倍晋三元首相が奈良市内で街頭演説中に銃撃を受け、亡くなった。
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アメリカのトランプ前大統領が2024年7月13日、東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃を受け、右耳を負傷しました。銃撃の詳細や米大統領選への影響など最新のニュースをお届けします。