NY株1500ドル高、規制緩和期待 JPモルガン12%高

【ニューヨーク=斉藤雄太】米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領の当選が確実になったことを受け、6日の米株式相場は大幅高になった。ダウ工業株30種平均は前日比1508ドル(3.6%)高の4万3729ドルで終え、約3週間ぶりに最高値を更新した。トランプ氏が選挙戦で訴えた減税延長など米経済を押し上げる政策や規制緩和への期待から、景気に敏感な銀行株の上昇が目立った。
ダウ平均の1日あたりの上昇幅は新型コロナウイルス禍の直後で相場が急変動していた2020年4月以来、4年7カ月ぶりの大きさを記録した。多くの機関投資家が運用で参照するS&P500種株価指数は2.5%高、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数も3%高になり、いずれも最高値を付けた。
大統領選と同時に5日投開票された連邦議会選では共和党が上院の過半数を確保し、下院も接戦ながら民主党をリードしている。共和党が大統領と上下両院を押さえる「トリプルレッド」と呼ぶ状態になれば、政策の実現可能性が高まるとの期待も株高を促した。
事前予想では大統領選も議会選も接戦が見込まれ、先行き不透明感から投資家は積極的な買いを控えていたが、その反動も出ている。
業種別では金融株の急騰が目立ち、ゴールドマン・サックスは13%高、JPモルガン・チェースも12%上げた。バイデン政権下の規制当局は大手銀行の資本規制強化に取り組み、企業の大型M&A(合併・買収)にも慎重な姿勢をみせている。政権交代でこうした制約が緩めば、銀行ビジネスや株主還元に追い風との見方がある。
トランプ氏は暗号資産(仮想通貨)の振興も掲げ、代表的なビットコインは一時最高値を記録した。仮想通貨交換大手コインベース・グローバルの株価は31%上昇し、関連銘柄に買いが広がっている。トランプ氏は米国の製造業の復活や石油資源の採掘拡大も主張し、恩恵を受けやすい建設機械のキャタピラーの株価も9%高になった。
選挙戦でトランプ氏を支援した起業家のイーロン・マスク氏が率いる電気自動車(EV)大手テスラの株価は15%高になった。
他方でトランプ氏はバイデン政権が進めたEVや再生可能エネルギーの普及といった脱炭素投資には否定的な考えを示す。EVのリビアン・オートモーティブは8%安、太陽光発電のファーストソーラーは10%安と急落し、「トランプトレード」で明暗が分かれた。
米債券市場では長期金利の指標になる10年物国債利回りが一時4.4%台後半まで上昇(債券価格は下落)し、約4カ月ぶりの高水準を付けた。9月半ば以降に0.9%近く上昇している。トランプ氏の景気浮揚策が財政悪化やインフレ再燃を招くとの見方が米国債売りを誘っており、金利上昇がさらに進めば堅調な米景気に打撃を与える可能性もある。
ニューヨーク外国為替市場では対ドルの円相場が1ドル=154円台前半から半ばの水準で推移した。米金利上昇による日米金利差の拡大を踏まえたドル買い・円売りが優勢になっている。
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