米軍トップ、ウクライナ紛争「数年単位」 東欧拠点拡大
【ワシントン=坂口幸裕】米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は5日、下院軍事委員会の公聴会で、ウクライナ紛争について「少なくとも数年単位になる」と述べた。ロシアの脅威が高まる欧州の抑止力を強化するため、東欧諸国で米軍拠点の拡大を検討すると表明した。ポーランドやルーマニア、バルト3国を候補に挙げた。
ミリー氏は「北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米国、ウクライナ、同国を支援するすべての同盟国・有志国はかなり長い間、この紛争に関与することなるだろう」と明言した。「欧州での長期的な軍の態勢は今まさに議論しているが、長期間にわたって兵力が増強される可能性があるのは明らかだ」と話した。
現在、欧州に展開する米軍は10万人で、国防総省は2月上旬から1割以上増やした。ミリー氏は「実際に部隊がいることは抑止力になる」と言及。「私の考えでは恒久的な基地を設け、常駐させずに巡回駐留させるやり方が効果的だ」と説明した。一時的に米兵を派遣するローテーション形式を採用すれば費用負担が抑えられると強調した。
公聴会では、ロシアや隣国ベラルーシによる脅威の最前線になるエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国に加え、ポーランドやルーマニアが恒久的な基地建設の費用負担に前向きだと明らかにした。
ミリー氏はロシアによるウクライナ侵攻について「私の42年間の軍勤務の中で最大の脅威を目の当たりにしている」と主張した。「より不安定な世界に入りつつあり、大国間の重大な紛争のおそれは増大している」とも提起した。
ウクライナへの米軍派遣には改めて慎重な考えを示した。「(米軍派遣は)ロシアとの武力衝突のリスクを伴う。私はそれは勧めない」と唱えた。
バイデン米大統領は一貫してウクライナへの派兵を否定してきた。「ロシアとの直接対決は第3次世界大戦になる」と繰り返すのは、世界の9割の核兵器を保有する米ロが戦火を交えるわけにいかないとの判断がある。
ミリー氏は「米軍をウクライナに送らない限りはプーチン(大統領)を抑止できたと思えない。ウクライナ侵攻は彼の長年の目標で、抑止するには米軍の投入が必要だった」と発言した。
さらに同氏は台湾有事をにらんだウクライナ危機の教訓にも触れた。「敵が侵攻を試みた際、軍が武装し訓練を受けていれば非常に有効だ」と語った。米欧から武器供与を受けているウクライナの激しい抵抗で、想定外の苦戦を強いられているロシア軍と中国人民解放軍を重ね合わせたとみられる。
オースティン国防長官は同じ公聴会で「台湾が自らを守るために必要なものを支援する」と述べた。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)