中国、成長目標「5%前後」に下げ 全人代開幕
【北京=川手伊織】中国の第14期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第1回会議が5日午前、北京の人民大会堂で開幕した。李克強(リー・クォーチャン)首相は、2023年の経済成長率目標を「5%前後」とし、22年の「5.5%前後」から下げた。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策で痛んだ経済の正常化へ財政支出を拡充する。
全人代は13日に閉幕する。閉幕日には国家主席として3期目入りする中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記が演説する見通し。新たに首相に就任する李強(リー・チャン)氏の記者会見もある。
会期は前年より2日長い。任期5年の国家主席など主要人事を決めるためだ。ただ18年の会期は約2週間だった。「ゼロコロナ」政策は今年1月に終わったが、全人代の短期開催は続く。

経済成長率の目標を引き下げるのは2年連続だ。22年の中国経済は「ゼロコロナ」政策などで3%成長にとどまり、同年の政府目標「5.5%前後」を大幅に下回った。李氏は所信表明にあたる政府活動報告で、消費の回復・拡大を優先課題とし内需拡大に注力する方針を示した。
政府活動報告で李克強氏は積極的な財政政策は「いっそう強化して効率を高める」と強調した。国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率は3.0%に設定し、昨年目標の2.8%から引き上げた。地方政府のインフラ投資を促すため、専項債と呼ぶ関連債券の発行額は3兆8000億元(約75兆円)とし、22年から1500億元増やした。
消費回復のカギを握る雇用の目標をめぐり、失業率は5.5%前後とする。22年の「5.5%以下」からわずかに目標を緩めた。都市部の新規雇用は1200万人前後とし、前年の1100万人以上から引き上げた。

産業政策では、習指導部の下で企業や研究機関が総力を挙げて半導体産業などを育成する「新型挙国体制」を整えると強調した。「重要な核心技術を巡る難関を乗り越えるうえで政府主導を徹底する」とした。米国の先端半導体をめぐる対中輸出規制への危機感がみてとれる。
全人代では国務院(政府)の体制を正式に決定する。李強氏のほか、マクロ経済政策の司令塔を務めた劉鶴(リュウ・ハァ)副首相の後任に、国家発展改革委員会の何立峰(ハァ・リーファン)主任が就くとみられる。
政府活動報告では台湾についても触れた。「新時代の党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、『独立』反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和的統一への道を歩む」と明記した。2024年の台湾総統選を念頭に、統一へ圧力を強める姿勢を示したとみられる。
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