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[社説]デジタル時代の新紙幣が問う現金の役割

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新しい紙幣(日本銀行券)が3日、発行される。デジタル時代のなか、現金の役割が問われる局面での登場だ。デフレからインフレへ潮目の変化も重なる。お金の流通や決済の仕組みの望ましいあり方を考える好機としたい。

改刷は偽造防止が主目的だ。肖像画が立体的に見える3Dホログラムなど最先端技術を採用した。

1万円札の顔は日本の資本主義の父と称される渋沢栄一になる。第一国立銀行など約500の企業群を立ち上げ、日本経済の礎を築いた。5千円札は女子教育の先駆者津田梅子、千円札は細菌学者の北里柴三郎にそれぞれ変わる。

旧紙幣も今まで通り使える。「無効になるので交換を」などと持ちかける詐欺に注意が必要だ。

一方で、使えるとはいえ、明確な目的なく自宅などで保有する「タンス預金」については有効活用を考える契機になりうる。

紙幣の発行残高約120兆円のうち、半分の約60兆円がタンス預金と推計される。消費などに回れば経済活動が刺激されるが、使わない間に物価が上昇すれば現金の実質価値は目減りする。

日銀は3月、17年ぶりの利上げに踏み切った。今年から少額投資非課税制度(NISA)も拡充された。投資を選択肢として検討するのもよいだろう。

デジタル時代に対応したキャッシュレス化は待ったなしだ。現金決済のインフラの維持コストは重く、経済産業省の試算で年2.8兆円に上る。日本のキャッシュレス比率は約4割と中国、韓国の8〜9割超に比べて見劣りする。

新紙幣にはATMや券売機の改修が必要になる。コスト高に苦しむ飲食店などでは対応済みは半分程度にとどまる。政府はこの機に抜本的な省人化、キャッシュレス化への投資を促す施策を打つべきだ。キャッシュレス比率8割という目標の早期達成にも資する。

海外では、法定通貨を電子空間で流通させる「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」の導入への検討が進む。日銀も「デジタル円」の将来の実用化を視野にパイロット実験を2023年に始めた。

デジタル円は、乱立ぎみの民間デジタルマネーをつなぎ、オンライン決済をより便利で安全にする可能性を秘める。新たな金融テクノロジーを使ったビジネスのきっかけにもなる。それでも紙幣が完全に無くなる日は見通せない。共存しつつ未来を模索したい。

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