民主党新代表に野田氏選出、株式相場への影響は プロに聞く
民主党は29日の党代表選で、菅直人首相(民主党代表)の後継となる新代表に野田佳彦財務相を選出した。野田氏は30日の衆参両院本会議の首相指名選挙で首相に選出される見通しだ。政権交代後で3代目となる野田新政権に対し、株式市場はどんな期待や注文を持ち、相場への影響をどうみているのか。市場関係者に聞いた。
「市場に安心感を与える効果」
ビバーチェ・キャピタル・マネジメント運用部長 三井郁男氏
野田氏の民主党の新代表への選出は株式市場に安心感を与える効果があるだろう。財務相時代には為替介入へ積極的な姿勢を示していたほか、日銀と協調した政策対応も期待できる。全体として経済への理解がある人物で、5人の候補者の中では市場の信認が最も厚かったと言える。株式相場には一定のプラス材料になるとみる。
世界の景気減速懸念などで投資家は一斉に株式の保有残高を減らしたが、現在の日経平均株価などの水準は低すぎる。今後は、これら買い余力のある投資家の買い戻しなどで日経平均も戻りを試すと予想している。もっとも、財政規律を重視する野田氏が新首相となることで財政による景気下支え効果はそれほど期待できなくなった。そのため、日本株の上値は重くなる可能性が高い。
「国会対応進み、相場にはプラス」
大和住銀投信投資顧問投資戦略部長 門司総一郎氏
野田氏の民主党代表選出を受けて、株式相場はいったんマイナスの方向に反応した。野田氏が主張する復興増税を警戒しているためだ。しかし、野田氏は当初の増税を前面に押し出した政策主張を修正し、徐々にトーンダウンしてきている。増税を志向するにしても、実際に実行するかどうかは景気や金融市場の動向を注視しながら判断すると思われ、それほど心配することはないだろう。
野田氏は自公両党との3党合意を順守する意向を示し、マニフェスト(政権公約)の見直しにも前向きだ。5人の候補者の中では野党との協調が比較的進みやすい主張をしているため、野田氏の新代表選出で国会対応が前に進む可能性が高まった。党内をうまくまとめ、野党との協力関係を維持することで東日本大震災からの復興に向けた政策の実行可能性が高まれば、株式相場にはプラスに作用するだろう。
「震災後の安値更新の可能性も」
SMBC日興証券国際市場分析部次長 橘田憲和氏
野田氏が民主党代表に選出されたことは株式相場にとってはマイナスとなるだろう。1回目の投票で野田氏が2位となったことが分かった直後、前週末比で100円程度高かった日経平均株価は急速に伸び悩み、債券価格は上昇した。明確な増税路線を打ち出している野田氏を株式市場が警戒していることの証しと言えそうだ。野田氏は為替の円高阻止なども主張しているが、財務相時代にできなかったことを首相になったらできるということもないだろう。
欧米で財政出動が困難となるなか、日本だけは東日本大震災からの復興のための財政出動が確実視されていた。その期待が日本の株式相場を支えていた面がある。増税となれば、景気を腰折れさせるリスクが増すことになり、財政による景気の下支え効果を打ち消すことになりかねない。増税の規模にもよるが、日経平均株価は震災後の安値(8605円)を割り込む可能性もある。
「市場に閉塞感も、海江田氏よりはプラス」
三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長 藤戸則弘氏
野田氏が民主党の新代表に選出されたことで株式市場では閉塞感が強まる可能性が高い。海外景気の先行きに不透明感が強まっているにもかかわらず、野田氏が主張する増税を進めるとなると、これまで下期の回復が確実視されてきた国内景気も下押しする公算が大きい。今日の日経平均株価は上昇しているが、売り方による買い戻しの動きが中心で株式相場の足腰はまだまだ弱い。野田首相の誕生で日経平均も下値模索の展開になりそうだ。
1回目の投票で前原誠司前外相の得票数が伸び悩んだところをみると、成長と財政再建を目指すという主流派の主張は否定された側面が強く、気がかりだ。もっとも、自公両党との3党合意を覆す可能性を示唆していた海江田万里経済産業相が新代表になるのに比べると、株式相場にとってはプラスと言えるだろう。
(聞き手は佐藤俊簡)