ウクライナ政府軍、親ロ派の本拠に進攻
【モスクワ=石川陽平】ウクライナ東部で政府軍と治安部隊が親ロシア派武装勢力への攻勢を強めている。一部は中心都市ドネツクの市街地まで進攻し始め、親ロ派の主力部隊との攻防戦が激しさを増しているもようだ。マレーシア機の撃墜事件で欧米から厳しく非難される親ロ派は、軍事的にも一段と劣勢に立たされた。ポロシェンコ政権は今秋にも行われる最高会議(国会)選挙に向け、東部制圧を急ぐ考えだ。
親ロ派武装勢力が最大の拠点とするドネツクの中心部で26日未明までに、大学や中央市場がある市街地で軍事行動が始まった。砲撃や爆発、銃撃戦の音が聞こえ、装甲車や救急車が通りを行き交っているという。インタファクス通信が地元住民の話として伝えた。
東部での戦闘は7月5日未明までに、親ロ派がドネツク州の北部の軍事拠点スラビャンスクや周辺地域から撤退し、政府側が優勢に転じた。これに対し、親ロ派は最大の拠点を置く東部の二大都市ドネツクとルガンスクに後退し、態勢を立て直そうとしていた。
軍や治安部隊は両都市への包囲網を狭めるとともに、圧倒的な装備でドネツクの市街地に迫りつつあった。これに対し、親ロ派武装勢力の軍事部門を率いるストレルコフ司令官が16日、同市に戒厳令を敷くと発表。21日にはドネツク駅で戦闘があったと伝えられ、郊外の空港を巡る攻防戦も激しくなった。
親ロ派はドネツク市内に深く政府の部隊を引き込み、ゲリラ戦を展開しようとしている。ただ、補給路が細り、周辺地域にも政府の部隊が入り込む中、どこまで持ちこたえられるかは不透明だ。ストレルコフ司令官は19日、ドネツクとルガンスクやロシアを結ぶ補給線が絶たれたとして「戦略的敗北だ」と焦りを見せた。
ポロシェンコ政権はマレーシア機撃墜事件を機に親ロ派への攻勢を一段と強め、長期停戦には応じない姿勢だ。24日には連立与党が崩壊し、ヤツェニュク首相が辞意を表明したが、国家安全保障・国防会議の代表は25日「テロリストを壊滅させる東部での作戦は続く」と言明した。10月末にも実施される国会選挙を前に、東部の和平を国民に示す狙いがある。