マレーシア機撃墜、親ロ派が証拠隠滅か
主要国が真相究明迫る
【モスクワ=田中孝幸】マレーシア航空機がウクライナ東部で撃墜された事件で、欧米などの主要国が調査を急ぐよう迫っている。一方、撃墜への関与が疑われる親ロシア派の武装勢力は現地調査を妨害し、証拠隠滅の疑いが濃くなってきた。真相究明や犠牲者の遺体搬送が後回しにされる悪循環に陥っている。
ウクライナ内務省は18日、撃墜に使用されたとみられるブク地対空ミサイルを搭載した大型車両がロシア国境に向かう様子を撮影したと発表した。ホームページに映像を公開し、親ロ派が犯行の証拠隠滅を進めていると非難した。
東部の戦闘地域では親ロ派への攻勢を強めた。欧米やロシアの首脳は即時停戦を呼びかけているが、ゲレテイ国防相は18日、「我々はウクライナからテロリストが消えるまで決して退却しない」と述べ、親ロ派の掃討作戦を徹底的に続ける意向を示した。
ウクライナ軍は同日、ルガンスクの親ロ派の拠点を砲撃し、町の南東部を奪還したと発表した。市当局によると少なくとも16人の市民が犠牲になった。ロシアメディアによると軍は親ロ派が占拠してきたルガンスク州やドネツク州の空港の掌握を進め、主要都市ドネツク郊外でも兵力を増員。戦車やロケットランチャーによる攻撃を始めた。
親ロ派は政府への反発を強めており、遺体や機体の捜索活動にも深刻な悪影響が及んでいる。ウクライナ保安局は19日、戦闘地域にある墜落現場周辺20平方キロの「安全地帯化」で親ロ派と合意したと発表したが、親ロ派幹部はこれを否定した。
現場の保存をうたったウクライナ政府との合意は守られず、機体の残骸が失われる恐れも出ている。航路を記録したフライトレコーダーを含むブラックボックスも一度は政府側に渡ったと報じられたが、政府当局者は19日「行方が分からなくなっており、何の情報もない」と明かした。
欧州安保協力機構(OSCE)の調査団の先遣隊は18日、現場に入ったが、親ロ派の妨害を受けて1時間あまりで撤収した。OSCEによると、犠牲者の遺体の多くは放置されているといい、現地への安全な通行路も確保できていない。マレーシアのリオウ・ティオンライ運輸相は19日、真相究明に必要な証拠の散失に懸念を示した。ロシアは軍事行動を続けるウクライナ政府への非難を強めた。アントノフ国防次官は19日、「ロシアなどに罪をきせ、事態を利用しようとしている」などとウクライナ側の対応を批判した。
マレーシア航空は19日、墜落機の乗客・乗員298人の国籍を発表した。約6割がオランダ人で、日本人は含まれていなかった。ウクライナのメディアによると、このうち約80人は子供だったという。