ギリシャ国民投票、世界揺らす 国内からも批判
ギリシャのパパンドレウ首相が欧州連合(EU)などの支援策受け入れの是非を国民投票で問うと表明したことを受け、同国の政局が混乱している。EUとの合意を脅かす発表に対し、与党議員からの批判が続出。国民投票に先立って実施予定の内閣信任投票の結果は読みづらくなり、事態が一段と流動的になった。欧米の要人からは国民投票案に批判的な発言が相次ぎ、2日の東京市場では日経平均株価が大幅安。首相の突然の提案は世界に波紋を広げている。
「国民投票はギリシャがユーロに参加し続けることを内外に示すことになる」。パパンドレウ首相は7時間に及ぶ閣議でこう訴え、政府広報官は2日、「内閣は(国民投票に)支持を表明した」と発表した。
EUの支援策の前提となる財政緊縮策への国民の不満は強く、大規模な反対デモが続く。欧州外交筋は国民投票案について、ユーロから離脱するか否かを焦点とし「危機を訴えることで国民を納得させる賭けに出た」と指摘する。
解散総選挙も
国民投票という賭けの前に立ちはだかる難関が、4日に国会で実施予定の内閣に対する信任投票だ。現地からの報道によると、複数の与党議員が国民投票の実施を批判し、首相辞任を公然と求めている。同国議会は定数300に対して与党の議席が152にとどまり、信任投票の行方は不透明な情勢だ。
仮に不信任となれば国民投票の実施は宙に浮く一方、内閣は総辞職に追い込まれる。その場合、新首相がそのまま政権を運営するか、解散総選挙に打って出るかの選択肢が浮上する。総選挙なら一段の政治的な混乱は避けられず、財政再建策の実施が遅れることは確実。選挙を回避しても、財政再建策を巡りEUなどとの再交渉を主張してきた野党中心の政権が樹立されれば、早急な支援策の実施が危ぶまれる。
国会で内閣が信任を得た場合、次の焦点は国民投票となる。内閣が設問を決め、国会の承認を経て実施する手続きがあるが、12月にも前倒し実施する可能性が出ている。
市民の思い複雑
投票で市民がどう動くかは見えにくい。アテネ在住の公務員エレニさんは「今になって判断を国民に委ねるのは脅迫状のようなもの」と政権を批判する一方、「現実的にEU支援策を拒否することはできない」と揺れる心の内を明かす。
カギを握りそうなのは設問の内容。過去の世論調査ではEUなどの支援策に否定的な声が目立った半面、7割以上の国民がユーロ圏にとどまるべきだとも答えている。仮に国民投票でEUの支援策が否決されれば、パパンドレウ政権の退陣は避けられない。
外交筋は「国際社会の反応も投票行動に影響するのではないか」と指摘する。バローゾ欧州委員長は2日、「EUの計画がなければギリシャ市民にはさらに痛ましい結果がもたらされるだろう」との声明を発表。ドイツ財務省の報道官は同日、「国民投票の前に次回のギリシャ向け融資が実施されるかは議論の余地がある」と表明している。
追加支援の是非を十分な賛成が得られるかどうか分からない国民投票にかけることに、欧米の要人は不満の声を上げる。世界銀行のゼーリック総裁は国民投票について「サイコロを振るようなもので、金融市場の不確実性が高まる」と批判。国民投票案の表明は今のところ、パパンドレウ首相を内外で窮地に追い込む結果となっている。