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原子炉建屋まで70メートルで考える(震災取材ブログ)

福島第1原発視察ルポ

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東京電力は5月26日、福島第1原子力発電所4号機の原子炉建屋内部を報道陣に初めて公開した。細野豪志原発事故担当相に同行する形の代表取材だが、これとは別に建屋から70~80メートル離れた地点まで報道各社の立ち入りも認めた。いずれもがれき撤去が進み放射線量が下がったためだが、建屋近くには大型クレーンなどの重機がいまだ物々しく配備されていた。

午前10時ごろ、事故対応拠点のJヴィレッジ(福島県広野町・楢葉町)をバスで出発。「1.4マイクロ」「1.5マイクロ」「2.5マイクロ」……。付き添いの東電社員が1時間あたりの放射線量(単位マイクロシーベルト)を随時発表する。原発正門に近づくにつれ線量は上がっていく。正門前では「11マイクロ」だった。

約30分で正門に到着、現地対策本部である免震重要棟前でバスを降りた。ここまでは綿手袋と薄いビニール手袋、靴カバーのみの装備。第1原発の公開自体は昨年3月11日の事故後で5回目だが、線量低下と免震重要棟が非管理区域となったことを受け、今回から敷地内に入る際は全面マスクと防護服が不要となった。

免震重要棟で、防護服と全面マスクを装着し、綿手袋の上からゴム手袋2つ、靴カバーも2重に履いた。防護服は、7月1日から利用が始まるポリプロピレン製を試験的に着用。従来のポリエチレン製より通気性が良いという。

午後1時ごろからバスで敷地内の循環を開始。まずグラウンドのような広い土地では、クレーンや油圧ショベルなど重機が並び、汚染水を処理した後の水から複数の放射性物質を取り除く「多核種除去設備」の基礎工事が始まっていた。完成は9月の予定だ。

その後バスは4号機原子炉建屋の西側に。事故を起こした1~4号機のうち、定期検査で止まっていた4号機は3号機から流れた水素が爆発したとみられている。建屋周辺の道路はがれきがほぼ撤去され、報道陣はこの日、建屋から70~80メートルの地点に降車。「80から100」。東電社員が説明した線量は2~3月(毎時200~350マイクロシーベルト)の半分以下になっていた。

見上げると、高さ40メートルを超す4号機の建屋は、壁がはがれ落ちて鉄骨や鉄筋コンクリートがむき出しになっていた。最上階の5階は屋根と壁の大部分が吹き飛び、定期検査中で外していた格納容器の黄色いフタと、定検で使う緑色の器具が地上から見えた。

視線を地上に戻すと、立ち入り禁止の標識がかざされ、その向こうには建屋上部からがれきを撤去する大型クレーンがそびえ立ち、小型重機も多数配備されていた。

原子炉建屋南西の高台に移動したバスから降車して見ると、4号機建屋の向こうに3号機建屋の姿が現れた。最上階の壁がほぼ消え、はりが大きく折れ曲がっているようだったが、がれきなどの状態は確認できない。その後原子炉建屋東部の海側に移動。3号機から約30メートル離れた地点では、放射線量がバスの車内でも毎時1500マイクロシーベルトあり、依然として高水準だった。

1~4号機の廃炉にあたり、最初に燃料を取り出すのが4号機の使用済み燃料プールで2013年になる。今年7月には試験的に2本の燃料を取り出す方針。4号機の作業が今後の試金石となるが、細野原発相は視察後「依然として厳しい環境にあることを改めて感じた」。4号機建屋の壁の3.3センチメートルの膨らみについても「健全性は確認できたが再度安全性を確認してもらいたい」と話した。

報道陣を乗せたバスが海側を通った際には、廃棄物処理建屋では放射性物質の飛散を抑える緑色の薬剤の散布で、横転した小型車両などが緑色に染まっていた。その異様な光景は事故の深刻さを伝えており、安定的に廃炉に導くにはなお課題が山積している。

Jヴィレッジに戻ると、積算線量計は73マイクロシーベルトを示していた。この日の報道陣の積算線量は原発相同行記者を含め60~110マイクロシーベルトだった。夏用防護服は、少し冷房の効いたバス車内では涼を感じる場面もあったが、これから暑い夏を迎え、全面マスクで顔が覆われた状態での外の長時間作業となると、過酷な労働環境であるのは想像に難くない。(福士譲)

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