日韓首脳が会談 EPA交渉再開目指す
【ソウル=山内菜穂子】韓国を訪問中の野田佳彦首相は19日午前、ソウルの青瓦台(大統領府)で李明博(イ・ミョンバク)大統領と会談した。日韓経済連携協定(EPA)交渉の再開に向け、実務協議を進めることを確認。緊急時にドルなどの外貨を融通し合う通貨スワップ(交換)協定の枠を現行の5倍にすることで合意した。首相は韓国側が求めていた朝鮮半島由来の図書の一部を引き渡すとともに、大統領に早期来日を要請した。
今回は首相にとって米国での国連総会出席を除けば初の外国訪問。竹島(韓国名・独島)の領有権問題などを巡り韓国政界でにわかに対日強硬論が高まっており、訪韓で事態の打開につなげる狙いがある。
首相は日韓併合時代に日本に渡った「朝鮮王室儀軌(ぎき)」など朝鮮半島由来の図書(1205冊)のうち5冊を持参した。残りの図書については期限である12月を念頭に「しかるべき時期に引き渡せるよう調整したい」と強調。そのうえで「韓国にも日本に関連する文書がある」と指摘した。
2004年以来中断しているEPA交渉について、首相は会談後の共同記者会見で「なるべく早い時期に交渉を再開し、締結できればいい」と表明した。大統領も早期実現に前向きな姿勢を示し「業種別にお互いに意見の違う点をよく調整できるなら肯定的に考える」と語った。
日韓首脳は北朝鮮の核開発問題について、日米韓3カ国が緊密に連携し、北朝鮮の具体的行動を求める方針を確認。大統領は北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け日本の立場を支持し、協力する考えを伝えた。
大統領は「歴史を忘れず、未来に向かって進んでいくことが日韓関係の根幹だ。過去の歴史問題において日本の積極的な努力が必要だ」と強調した。従軍慰安婦問題は会談で議論にならなかった。
通貨スワップ(交換)協定については現行の130億ドル(1兆円)を700億ドルに増やすことで合意した。12年10月末までの臨時措置。欧州の債務危機で金融市場が不安定になっていることを受け、外貨不足に備えた安全網を手厚くする。
日本政府と韓国銀行の間で300億ドルのドル融通枠を新設。日銀と韓国銀行が現在結んでいる円・ウォンのスワップ協定も30億ドルから300億ドルに増額する。既存の危機対応のドル融通枠100億ドルと合わせ、総額は計700億ドルとなる。
10月に入り、韓国ウォンが対ドルで急落するなど、韓国の金融市場の動揺が目立っていた。協定に基づいて韓国側が要求すれば、日本は米ドルや日本円をウォンと引き換えに渡す。逆に日本が日本円と引き換えに米ドルやウォンの供給を求めることもできる。
供給された外貨は外国為替市場で自国通貨を買い支えるための介入資金や外国との貿易の支払いに使われる。