男に売れてる本、女が読みたい本 ベストセラーのトレンドを読む
日経エンタテインメント!
まず、2012年の上半期に、女性に売れた本を「TSUTAYA」のデータから紹介しよう[注1]。上位10冊を見ても分かるように健康・ダイエット本が圧倒的に強い。
10位以内に3冊ランクインした『カーヴィーダンス』シリーズ、2冊ランクインの『体脂肪計タニタの社員食堂』シリーズ、そして出版各社から出された各種『骨盤枕』本など、発売から1年以上売れ続けているロングセラーが少なくない。ここ数年の健康ブームを象徴しているといえよう。
またこれらの健康・ダイエット本は、空気を入れてふくらませる骨盤枕や、ダンスの動きを見せるDVDなど付録が充実しているのも、女性にアピールするお得感につながっているようだ。
健康本以外でも実用書が圧倒的に強く、文芸書は上位30冊中4冊のランクインにとどまった。本屋大賞の『舟を編む』、東野圭吾、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、東川篤哉、『謎解きはディナーのあとで2』は男女共通で売れているが、異色のヒットは『ピンクとグレー』。ジャニーズのNEWSメンバーが執筆した小説で、圧倒的に女性に売れた。
異色といえば、ファンタジー絵本『こびとづかん』シリーズから、14位と20位に2冊ランクイン。きもかわキャラクター「こびと」は子どもに人気で、せがまれた母親たちによって購入されている。
男性の1位『一流の男、二流の男』は他の書店チェーンでも売れ行き良好ではあるが、とりわけTSUTAYAでは積極的に店頭展開したことから、男性の上半期総合1位になった。
女性の「健康・ダイエット」本にあたる強いジャンルが、男性では「ビジネス・自己啓発」本だ。6位の落合博満『采配』や、23位長谷部誠『心を整える』、25位『あんぽん 孫正義伝』まで含めると、トップ30のうち11冊までをこのジャンルの本が占めた。
健康・ダイエット本も、女性ほど多くはないが6冊ランクイン。メタボ健診に始まる男性の健康志向の広がりを示している。ユニークなのは『50歳を超えても30代に見える生き方』が13位に入っていること。従来は女性向けの美容ジャンルのテーマだった「アンチエイジング」をうたった本ながら、著者である男性医師が自ら広告塔として表紙や帯に登場している点が、興味を引いているようだ。
文芸書は女性より多い6冊がランクイン。本屋大賞の『舟を編む』、『このミステリーがすごい!』1位の『ジェノサイド』、芥川賞受賞の『共喰い』と、買ってハズレがない話題の本に男性は手が伸びやすいようだ。
最後に、時代を象徴する男性ならではのランクインといえるのは、11位前田敦子、14位柏木由紀という2人のAKB48メンバーの写真集だろう。
文庫本の男女別上半期ベストセラーは
文庫本の男女別上半期のベストセラーを見てみよう(TSUTAYA調べ)。総合のベストセラーでは女性は健康・ダイエット本、男性はビジネス・自己啓発本が上位を占めていたのとは違って、文庫本ランキングからは小説の人気作家・ジャンルが分かる。
村上春樹の『1Q84』や東野圭吾『聖女の救済』をはじめ、男女両部門で上位にランクインしてバランスよく売れている本が少なくないが、細かく見ていくと"男売れ本"、"女売れ本"が見つかる。
男性では4位の『新約 とある魔術の禁書目録』や5位『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』など、アスキーメディアワークスから出版されている、いわゆるライトノベルが"男売れ本"だ。『新約 とある魔術の』と『俺の妹が』は男性購入者が9割を占めている。同じ版元でも例外は『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの2冊で、男女それぞれのランキングに入っており女性にも良く売れている。
一方、"女売れ本"の代表は5位の『僕等がいた』と9位の『ガール』。前者は同名の少女マンガを原作として今年、生田斗真・吉高由里子主演で映画化。本書はそれをノベライズしたものだ。『ガール』も香里奈、麻生久美子の出演で映画化され、多くの女性客を集めた。
(日経エンタテインメント! 高宮哲)
[日経エンタテイメント!2012年8月号の記事を基に再構成]
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