ランダース教授、40年後「米国貧しく、中国5倍豊かに」
日本経済新聞社は12日、電子版シンポジウム「未来からの警鐘」を都内で開いた。経済・社会予測の専門家、BIノルウェービジネススクールのヨルゲン・ランダース教授は2052年の世界の姿について「世界の人口は80億人でピークを迎える」と述べ、直線的に増加が続くことはないとの予測を示した。
ランダース教授は1970年代に世界的な影響を及ぼしたローマクラブの報告書、「成長の限界」の研究メンバーの1人。当時について「1972年に40年後(2012年)について予測して12のシナリオを作ったが、情報不足でどのシナリオが正しいか強く主張できなかった。それから様々なデータを取得できた結果、今回、これから40年後(52年)の自信ある予測を立てることができた」と述べ、ローマクラブへの新たな報告書にまとめた内容を紹介した。
地球全体で深刻になってきた環境破壊について「資本主義や民主主義が進む世の中では、いずれも自国の経済を優先し、環境問題解決に関して意思決定が遅い」と課題を指摘。ただ「実は解決は簡単だ」とも述べ、「国内総生産(GDP)のせいぜい2%を使い、石炭や石油など化石燃料を風力や太陽光など再生可能エネルギーに変えるだけで解決する」と話した。
今後の経済成長については世界を米国、中国、欧州や日本を含めた経済協力開発機構(OECD)諸国、新興国、その他の小国の5つのグループに分けて予測結果を報告。「米国は過去40年間でGDPが最も伸びたが、2040年を境に減少に転じて貧困層が増える。サービス産業など生産性の低い労働人口が増えるため」と述べた。中国については「今より5倍裕福になり欧州レベルに達する。共産党と国民の利害が一致しているからだ。新興国は半分は裕福になるが残り半分は過去40年間と同じ道をたどる。全体として成長は遅い」と予測した。
今後100億人にも達するとみられる世界の人口については「80億人でピークになる。主に先進国を中心に女性が子どもを産むより仕事を選ぶため、出生率が下がることなどが理由だ」と述べた。
最後に人口減少、高齢化社会が世界でも顕著に進む日本について、「世界ではネガティブな見方もあるが逆だ。日本こそが世界の20年先を進んでおり、手本にすべき国だ。環境改善技術も開発もめざましい。現にこれまでもGDPは増えてきた」とまとめた。