ギョッとする見た目、味で勝負 マイナー魚に脚光
外食で安く提供、品数豊富
「シロハゲ」「ニギス」「ケツブ」。一般の人にはなじみの薄い水産物を提供する外食店が増えている。水揚げが不安定なことや見た目の悪さから、取っても捨てられることが多かったが、産地と消費地の橋渡しになる業者の登場などで脚光を浴びるようになった。
大阪府豊中市の回転ずし店「ぶっちぎり寿司!!!」。愛媛県の漁港から届いたのはグレーで平らな魚体の「シロハゲ」や、赤や黒の鮮やかな縞(しま)が入った「ミノカサゴ」。見た目は奇抜だが、ともにきれいな白身で上品な薄味だ。
同店は2年前から延べ30種類以上の"マイナー魚"を販売し、白身魚の「カマガリ」などが定番になった。植村茂男総支配人は「一般的に人気がある魚ではないので割安。大半は1皿100円で提供できる」と話す。
同店と産地の橋渡し役が水産物販売の食一(京都市)だ。店ごとのニーズに合わせ、協力関係にある全国100以上の漁港から鮮魚を送ってもらう。「漁師たちが価値に気付いていない魚の中から掘り出し物を探す。外食店にとっては他店にはないメニューをつくれるメリットがある」(田中淳士社長)という。関西を中心に約100店舗に納品している。
冷凍在庫を確保して安定供給する企業も出始めた。マイナー魚の販売で知られるプロ・スパー(愛知県蒲郡市)は2009年に加工場を設立。鮮魚に加え、外食向けに冷凍加工品の販売も始めた。小型の深海魚で空揚げに向くメヒカリ、キスに似たニギスなど年間600品目をそろえる。
今夏から注文の翌日に届くネット発注も始め、ホームページでレシピなども提案している。出荷先は千店舗に上り、今年6月期の売り上げは前の期の2倍以上に伸びた。
"お宝"を自ら開拓する外食店もある。水産居酒屋「四十八漁場」を展開するエー・ピー(AP)カンパニー(東京・港)では岩手や宮崎の漁師と契約し、ツブ貝の一種の「ケツブ(アヤボラ)」や白身の「バリ(アイゴ)」などを調達する。
11年の日本の沿岸漁業の水揚げは全漁業の4分の1にあたる113万トンだった。しかし、底引き網漁など魚種の選別ができない漁法も多く、漁獲の3割程度が利用されずに捨てられるなどしている。