シンクロで更生目指す少年院 大阪・阪南
大阪府阪南市にある少年院がシンクロナイズドスイミングを更生に生かす取り組みを続けている。全員の心が一つにならないと演技が成り立たない。「練習は苦しいことの連続だったが、仲間の支えで乗り越えられた」。9月上旬、保護者向けの発表会にこぎ着けた入所者の一人は日に焼けた顔に充実した笑みを浮かべた。
海辺近くの「和泉学園」。窃盗や恐喝などの事件で少年審判を受け、送致された14~16歳の約140人が暮らす。10年前から毎年、十数人ほどが通常の教育課程や職業訓練とは別の特訓に耐え、映画「ウォーターボーイズ」さながらのパフォーマンスを披露してきた。
メンバーは本人の希望のほか、集団生活になじめないなど訓練の必要性を基準に選ぶ。全く泳げなかったり、潜水が得意だったりと、能力差は大きい。
担当の教官は「最初は全然リズムが合わず、動きはバラバラ。息が切れ、曲の途中で我慢できずに水中から顔を出す者も多い。それでもみんなと呼吸を合わせながら厳しい練習を続けることで責任感や忍耐力、協調性が身に付く」と説明する。
今年は6月下旬にチームを編成。選ばれた丸刈りの少年13人は同学園の敷地内にある屋外プールで、使わない間にたまったごみの掃除から始めた。週4回、1時間半ずつの練習を2カ月余り。生白かった体が黒く引き締まった。
発表会は9月6日。少年審判に関わった裁判官や保護者ら90人が屋外プールの観客席に集まった。ヒップホップ調に編曲された「白鳥の湖」に合わせ、水中から太ももが突き出されたり、ポーズを決めたり。そのたびに歓声が飛んだ。見届けた父親の一人は「集団で何かをやり遂げるには他者への思いやりが必要だ。今後の人生でもこの経験を生かしてほしい」と感慨深げだ。
1992年にバルセロナ五輪のシンクロのデュエットで銅メダルに輝いた高山亜樹さん(43)=兵庫県西宮市=も3年前から年に2~3回、指導している。「社会に出ても困難から逃げないで」とエールを送った。〔共同〕