「イレッサ」原告、全面敗訴へ 最高裁が国の責任否定
肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡り、東日本の死亡患者2人の遺族が国と輸入元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(寺田逸郎裁判長)は2日、国に対する原告側の上告を退ける決定をした。国の責任を否定した二審・東京高裁判決が確定した。
また製薬会社に対する上告について、同小法廷は判決期日を12日に指定。二審判断の見直しに必要な弁論が開かれないことから、会社の責任も否定した同高裁判決が維持される公算が大きい。
訴訟は、国が輸入販売を承認した2002年7月当時、医療機関向け添付文書に記した副作用に関する注意喚起が十分だったかが争点。死に至る間質性肺炎の危険性が「警告欄」ではなく「重大な副作用」の欄の4番目に記載されており、原告側は添付文書に欠陥があったと主張している。
一審・東京地裁判決は文書の欠陥を認めた上で、「国は安全確保のための行政指導が不十分だった」として、患者2人について国と会社に計1760万円の賠償を命令。これに対し、二審・東京高裁判決は「イレッサを使うがん専門医らは間質性肺炎での死亡があり得ることを把握していた」として、国と製薬会社の責任を否定した。
西日本の患者や遺族らが起こした同種訴訟では、一審・大阪地裁判決が国の責任を否定する一方、文書の欠陥を認め、会社に約6千万円の支払いを命令。しかし二審・大阪高裁判決は「医師は『重大な副作用』欄を読めば、危険性を認識できた」として国と会社の責任を否定、原告側が上告している。