文科省の「AI研究」新拠点 トップに東大41歳教授
文部科学省が所管する理化学研究所に4月に新設する、国内最大級の人工知能(AI)研究拠点「AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター」のトップ人事が、今週正式に発表される。センター長には、機械学習などの基礎理論で国際的に活躍している東京大学の杉山将教授(41歳)が就任する見通しだ。
杉山氏は「NIPS(Neural Information Processing Systems) 」という、世界的にトップのAI関連国際会議でアジア初のプログラム委員長になるなど、研究者として高い評価を受けている。同センターが目指す10年後を見据えた研究という観点で適任者であると判断されたもようだ。
AIPセンターは、次世代の革新的な技術の研究を目指す。2016年度の研究予算は14億5000万円、研究者やスタッフを合わせると全体で約100人規模になる予定。人選はこれからだが、40代の有能な若手研究者を集める計画だ。杉山氏の理論研究を主軸として、画像処理や自然言語処理などで活躍している若手研究者を集める方針だ。
加えて、AIやコンピュータービジョン、ロボット工学の世界的権威である米カーネギーメロン大学の金出武雄教授(70歳)など複数の著名な研究者を招聘する見込み。金出氏は特別顧問として、40代前半の杉山センター長に助言していくとみられる。
金出氏は米国での実績が豊富だ。米大陸自動運転横断ロボット車をはじめ、複数のカメラの画像を組み合わせてスポーツの好プレーなどを周囲360度から見ることができる「アイビジョン・システム」などの開発でリーダーシップを発揮した。アイビジョン・システムは、米フットボールリーグ(NFL)のスーパーボウルで採用された。自動運転や自律ヘリコプター、アイビジョン、顔認識、仮想現実、一人称ビジョンなどを専門とする。
AIPセンターをより有効に運営するために、経済産業省や総務省と連携する。具体的には、3省が所管するAI関連の研究所を束ねる司令塔となる組織を設立。その議長に日本学術振興会の安西祐一郎理事長が就任する予定だ。
経産省は産業技術総合研究所人工知能研究センター(辻井潤一センター長)、総務省では情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター(柳田敏雄センター長)などがAI関連の研究を進めている。60代後半の両センター長と比べて、杉山氏は30歳近く若くしてセンター長となる。
研究員の約3割は海外から
AIPセンター長の仕事はかなりの激務だとみられる。世界に通用する研究成果を上げるために、AIPセンターならではの研究テーマを選び、社会にインパクトをもたらす必要がある。関係者の話によると、研究テーマを選ぶ作業は「とてもハードだ」という。40代前半でバイタリティーがある杉山氏なら、この重責を全うする力があると見込まれたようだ。
しかも、グローバルで評価が高く実績がある研究者だけに、優秀な研究者を国内外から引っ張ってこられると期待されている。特別顧問になる金出氏の海外人脈も生かせるはずだ。
「研究員の約3割は海外から連れてきたい」という文科省の方針に対応できる人事だと言えそうだ。センター長人事が正式に決まることで、文科省が省を挙げて取り組んでいる政策「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」の中核となる、AIなどの統合研究拠点の体制が整うことになる。
(日経ビッグデータ 多田和市)
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