グーグルが農業に進出 ベンチャーに18億円を投資
米グーグル傘下の投資会社グーグル・ベンチャーズは、ビッグデータを活用して農家に生産効率を高める方法を提示するファーマーズ・ビジネス・ネットワーク(FBN)に投資する。グーグル・ベンチャーズを中心とした今回の投資で、FBNは1500万ドル(約18億4500万円)を調達する。
農家も企業経営と同じ
FBNのビジネスモデルを考案したのは、グーグルでエネルギー関連の技術革新や地熱プロジェクトを率いたチャールズ・バロン氏だ。農家は年間500ドルを支払ってFBNにデータを提供し、特定地域でどの製品や手法を使えば生産量を最大にできるかを同社の膨大な農業データからアドバイスしてもらう。
バロン氏はある年、プロジェクトの合間に兄弟の農場でトウモロコシを収穫したり、穀物カートを運転したり、コンバインを動かしたりして数カ月間を過ごした。同氏は「この体験で、農家はまさに企業家だということを学んだ」と話す。農家は作物の栽培方法を学ぶだけでなく、農機具や様々な農業製品の発注と維持管理、農場のマーケティング、収穫した作物の販売も手掛けなくてはならないからだ。
こうした農家に21世紀の経営手法を提供するため、バロン氏はアモル・デシュパンデ氏と共同で農家を後方支援するソフトウエアを作成。使った種子の種類や肥料の量、種まきの際の圧力など個々の農家についての情報や、環境的要因、土壌の養分、生産量をデータベースに集め、生産効率を高める方法を提示する。農家は自分の事業について包括的な視点を得られるだけでなく、ほかの農家が使っている技術や製品、成功している点も参考にできる。
農家はこれまで、ほかの地元農家との交流や大学の管理された研究、農業製品業者のデータを頼りにどの製品を使うかを判断してきた。だが、こうした状況は変わりつつある。
ビッグデータで生産性を向上
バロン氏は「農業のIT(情報技術)化に伴い、この分野のデータ量は増えつつある」と話す。今では農機具の多くに既にデータを収集する機能があるものの、互換性がないこともある。たとえば、ある農家は土壌の養分を測定するジョン・ディアの農機と、種子の生産性を分析するモンサントのツールを使ったデータ分析情報を持っているかもしれない。だが、こうしたネットワークは情報を共有していないばかりか、本質的に偏っている。
FBNは農家が自分でデータを記録し、国内の他の農家とデータを匿名で共有できる、独立したインターフェースを提供する考えだ。分析結果は自分の農場の状況が考慮されたデータであるため、ライバルの農場のデータと比較できる。ある農場のデータを定点観測すれば、化学薬品や肥料の使い過ぎを防ぐこともできる。そうすれば、農場の近くにある水路の汚染も軽減できるかもしれない。
FBNは昨年11月の設立以来、700万エーカーに相当するデータを収集してきた。データはさらに大幅に増える余地がある。米環境保護局(EPA)によると、2007年の米国の作物栽培面積は約4億エーカーだったからだ。
グーグル・ベンチャーズのゼネラルパートナー、アンディ・ウィーラー氏は「世界的に非常に大きな商機がある」と期待を寄せる。「市場規模を一見したところ、米国の農場の半分がこのサービスを直接活用できる」との観測を示した。
バロン氏は既に東欧やアジアの農家がFBNのデータ網に関心を示していると述べる一方、当面は米国でのシステム構築に全力を尽くす意向を示した。FBNは現在、米17州の16種類の作物と500品種の種子について分析結果を公表している。
FBNはグーグル・ベンチャーズのほかにも、ベンチャーキャピタル(VC)のクライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズやDBLインベスターズから合計で約2800万ドルを調達している。
By Ruth Reader
(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャー・ビート」から転載)