マレーシアのゴム手袋最大手、従業員3000人がコロナ感染
【シンガポール=中野貴司】マレーシアのゴム手袋世界最大手、トップ・グローブは25日、11月に入って新型コロナウイルスに感染した従業員が累計で約3千人に上ると明らかにした。クラスター(感染者集団)の発生で国内工場の多くが操業の一時停止や減産に追い込まれており、納品にも2週間程度の遅れが生じている。
世界的な医療用手袋の需要の増加で、同社の2020年8月期決算は売上高、純利益ともに過去最高を更新していた。一方で工場で働く外国人従業員の劣悪な労働・生活環境がかねて問題視されており、新型コロナの大量感染は環境改善の必要性を改めて浮き彫りにした。
トップ・グローブによると、11月2日に労働者10人の新型コロナ感染が発覚。検査対象を拡大したところ、これまでに検査を終えた約7千人の従業員のうち約3千人が陽性だったという。同社は約1万3千人の工場労働者全員への検査を1週間以内に終える方針で、今後、感染者がさらに増える可能性がある。
工場の操業停止や減産で21年8月期の売上高は当初の見込みより3%程度減る見通しだ。株価も感染拡大が発覚した11月に入り、下落基調が続いている。ただ、リム・ウィーチャイ会長は25日の会見で「ゴム手袋の需要は引き続き堅調で、工場での感染を抑制できれば株価も元に戻る」と、強気の姿勢を崩さなかった。外国人労働者が住む寮の設備を充実するなど、労働環境の改善にも取り組むと強調した。
マレーシアでは10月以降、新型コロナの感染再拡大が続いており、経済の減速要因になっている。世界シェアの高いゴム手袋の生産・輸出が他の産業の落ち込みを補完してきたが、新型コロナの大量感染で外国人労働者に頼るゴム手袋業界の脆弱性が露呈した。