西武3連覇の道険し 自慢の強打湿り、打順定まらず
プロ野球でパ・リーグ3連覇を狙う西武が苦しんでいる。8月13日の楽天戦で2015年以来となる7連敗を喫すると、翌日の試合では13-8という派手な打撃戦の末、先発全員打点のおまけもつけて打ち勝った。この試合から1分けを挟んで5連勝、息を吹き返したかにみえた。
ところが、最後の変則6連戦となったオリックス戦は3連勝の後に3連敗。監督が途中交代した最下位チームとの対戦で勢いをつけることはできなかった。ここまで23勝29敗の借金6で5位。首位ソフトバンクに7ゲーム差と引き離されている。
うまくいかないときはこんなものだろうか。23日のオリックス戦。「調子は比較的良かった」という先発の松本航が指にマメができたために大事を取って五回で降板した。すると2番手の宮川哲が六回に2点を失い、3-3の同点にされてしまう。
八回には、それまで防御率1点台と抜群の安定感を誇っていたリード・ギャレットがアダム・ジョーンズに3試合連続本塁打を浴びるなど3失点。九回に栗山巧の適時打などで1点差に迫るも、最後は2死一塁から中村剛也が二ゴロに倒れてゲームセット。あと一歩届かなかった。
少々の失点では動じない。破壊力抜群の打線で打ち勝つ。2年連続でチーム防御率がパ最下位ながらも、リーグ連覇を果たした西武の原動力は「山賊打線」とも呼ばれる攻撃力にある。18年に続き昨年もチーム打率2割6分5厘、1299安打、756得点、134盗塁と、チーム本塁打数こそ2位だったものの、主要各部門で1位を誇った。
その自慢の攻撃陣に昨年までの力強さがない。ここまでチーム打率こそリーグ2位の2割5分だが、54本塁打は3位、451安打は4位、32盗塁、236得点はともに5位に沈んでいる。
悩めるチームを象徴するのが昨季リーグMVPの森友哉だろう。打率3割2分9厘で首位打者に輝き、23本塁打、105打点はいずれもキャリアハイの記録を残したチームの要。それが今季はここまで打率2割6分3厘、5本塁打、20打点にとどまっている。
7月24日のロッテ戦では送りバントのサインが出て、プロ入り2個目の犠打をマーク。そのためか、7月30日のソフトバンク戦で2打席連続本塁打を含む3安打3打点の活躍を見せたときにはホッとしたように、「これといった一本が出ず、どうしたらいいのかと思っていた」と弱音も口にした。
昨オフ、米大リーグのレッズに移籍した秋山翔吾の穴も響いている。辻発彦監督は春季キャンプから、秋山が担っていた1番打者の人選を「今年はそこがカギになる」と重視してきた。当初は昨年、2度目の盗塁王のタイトルを手にした金子侑司を想定していたたものの、調子が上がらない。そのため開幕戦では新外国人のコーリー・スパンジェンバーグを起用した。
しかし、スパンジェンバーグは意外性には富むものの、リーグトップの80三振から分かるように打撃の粗さが目立つ。そのため4年目の22歳、鈴木将平や育成ドラフト出身で20歳の高木渉を起用するなど試行錯誤が続いているが、最適解は見つかっていない。
昨季、不振の山川穂高に代わって夏場から4番に座り、チームを逆転優勝に導いたベテランの中村も打率2割1分9厘、6本塁打、16打点と低迷。36歳の栗山が打率3割1分3厘、7本塁打、34打点と気を吐くのは明るい材料だが、打順は固定できず、苦しい戦いが続く。
課題の投手陣は昨季12勝1敗で防御率2.87と抜群の数字を残したザック・ニールが2勝3敗、防御率5.06と安定感を欠いているのが痛い。2年目で他球団に研究されたからか、動く速球を捉えられる場面が増えている。加えて昨季初の2桁勝利(10勝)を挙げた高橋光成は3勝5敗で防御率5.70、昨季7勝の今井達也は3勝3敗で防御率6.02と伸び悩んでいる。
オリックスとの6連戦では森が6試合中4試合で複数安打を記録するなど復調気配を見せてきた。投手陣でも22日に内海哲也が708日ぶりの復帰登板を果たし、6回3安打4失点とまずまずの投球を見せるなど、明るい兆候は少なからずある。何より、今季は平良海馬、ギャレット、増田達至と頼りになる救援陣が控えている。3連覇への道の視界は良好とはいえないが、シーズンはまだ半分以上残っている。
(馬場到)