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「給料をもらう」時代の終わり 報酬獲得型に様変わり

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

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新型コロナウイルスの影響は、これまで当たり前のように思われていた「給料をもらう」という働き方に根本的な見直しを迫りつつあります。ホワイトカラーを雇用する一般企業での働き方は、リモートワークの徹底など急速に変化しています。この流れが私たちの働き方をどのように変えていくのか、今後の動向を予測してみたいと思います。

今後の成り行きを考えるうえで重要な指標に有効求人倍率があります。この言葉は、簡単にいうと、「仕事を探している人1人に対する求人数」を意味します。この数字が大きければ大きいほど、求職者にとっては選択肢の求人が多い売り手市場であり、逆に企業にとってはライバル企業と人材を奪い合う厳しい状況になります。景気が悪くなり、求人倍率が低下すると、それとは真逆の買い手市場に一変します。今は新型コロナウイルスによって、求人倍率が急速に低下している最中です。

2020年2月の有効求人倍率は1.45倍で前月比0.04ポイント下がり、2年11カ月ぶりの低水準でした。3月以降もさらに低下が見込まれ、緊急事態宣言以降の4月は急激に低下することは間違いない状況です。

実際には業種別で大きな差が生まれることになりそうです。時間差で影響が広がっていくということもあるでしょうが、一部には、現在よりも人手不足が激化する市場もあると思われます。具体的には、旅館、飲食店、冠婚葬祭業、学習塾、アパレル、化粧品などの業界が先行して売り上げが激減していますが、今後、自動車関連や住宅・建設などへ裾野がさらに広がっていくことが懸念されています。

逆に、医療機関や、生活必需品を取り扱う流通業界、また、電子商取引(EC)サイトや物流などの業界では、現在よりさらに人手が足りなくなる可能性があります。

もし、新型コロナへの対応で外出規制などが来年にまたがって継続した場合には、あらゆる産業が大きなダメージを受けることになり、失業率の大幅な上昇のリスクが高まります。最悪の場合を想定して準備しておくことも重要です。

「成果と報酬を交換」に大きく変化

前回も触れましたが、日本企業はこれまで「メンバーシップ型」が主流で、それは総合職として採用されることが当たり前ということを意味していました。なんらかの専門領域を持った「ジョブ型」ではなく、総合職として働くということは、ほとんどの場合、現状では、労働時間の拘束とオフィスへの出勤を意味してきました。

しかし、今回の新型コロナウイルスの感染対策で、これだけリモートワークが広がり、在宅でも遂行できる職務が多いとことが証明された以上、もしコロナ問題が終息しても、以前と完全に同じ状況になるとは考えにくい状況です。

むしろ、労働時間での拘束やデスクに張り付いて仕事をする前提が崩れ、成果を上げられれば場所や時間は本人の裁量に任せるという働き方が、より拡大していくという見方のほうが優勢になると思われます。

結果的に、「会社にいることで給料をもらう」という働き方から、「成果と交換に報酬を獲得する」という働き方に大きな時代の転換が生まれると考えられます。

企業と従業員が「等価交換を行う」ことには変わりはありませんが、会社の命令通りに出勤してそこで業務を稼働するというプロセスに対して給与をもらう形態から、拘束時間に限らず、生み出した成果と報酬を交換するという形態に、交換するものの内容が変わります。

そして、交換する価値の内容が変わること以上に、大きな変化として「給料をもらう」という受動的な考え方から、「報酬を獲得する」という能動的なスタンスへの一大転換が起こります。このマインド変化についていけるかいけないかが、会社員にとって、生死を分けるインパクトがある分岐点となります。

自分が生み出す提供価値で報酬を稼ぐという能動的なスタンスを持たなければ、労働市場から脱落してしまうリスクすらあるのです。

「小さな副業」から稼ぐ力を覚醒

とはいえ、長く受動的な働き方をしてきた人にとっては、能動的に稼げといわれても、「何をどうすればいいのか見当がつかない」というのが正直なところだと思います。

しかし、過度に心配しなくても、いくつかの方法があります。もちろん、現在勤務中の会社での現在の役割で能動的なスタンスで報酬を獲得するという方法がベストであることは言うまでもありません。しかし、長年働いてきた職場、昨日までと同じ仕事で、急に受動型から能動型に変えるのが難しいのも当然です。

まずは、これまでのキャリアの中から、「どんな提供価値を売るのか」の候補を決めるところから始めましょう。無理やり、一つに絞る必要はありません。優先順位が高い順に考えると、以下のようになります。

(1)自分にしかできないこと

(2)他の人にもできるけれど、相対的に自分のほうが得意そうなこと

(3)他の人と比べて、特に強みはないが、自分にできること

ほとんどの人は、(1)は持っていなくても、なんらかの(2)があるはずです。そんなに大それたことでなくてもいいので、まずは自分が強みだとか、得意だと考えていることから、きっかけを探し始めるのがおすすめです。

具体的には、全力でリスクを取る転職や起業ではなく、小さなリスクで始められる副業からスタートする方法があります。企業によっては積極的に中高年の副業を推奨しているケースも増えています。自社の就業規則を確認して、ルールの範囲でできる副業をぜひ検討してみてください。

わかりやすい事例でいえば、たとえば経理部で長年経験を積んできた人であれば、経理のプロを探している中小企業でアルバイトや業務委託契約で、業務の一部を引き受けるという方法もあるでしょう。あるいは副業紹介サービスに登録して、自分の能力を顧問契約で買ってくれる企業を探す方法もあります。

ほかにも、将来は夫婦で喫茶店などの経営をやりたいという夢がある人であれば、いきなり喫茶店を経営するリスクを避けて、同業の人気店でアルバイトをしながらノウハウを蓄積し、自信を得てから開店するという進め方もあるかもしれません。

「待ち」を脱して、「自ら提案する人」に

自分が長年経験してきた本職の経験スキルを活用して、他社の業務を手伝う形で「他流試合」を経験して評価を受けることによって、「会社の外でやっていける自信」を育てられる形が一番自然かもしれません。誰かに感謝されたり、誰かの役に立てたりすることは、いくらベテランになってもうれしいものです。また、そうやって小さな業務、少ない金額であっても、自分で自分を売ることによって、より経営的な目線からマーケティングを考えられるメリットもあります。

基本的なことですが、仕事に対して「待ち」ではなく、自ら主体性を持って提案していくことを習慣づけることが最も重要です。副業だからこそ、結果を残そうとする姿勢や、現場の方と信頼関係を築こうとする姿勢が契約先企業との良好な関係構築につながり、結果的に成果を上げる原動力になります。

本業に軸足を置いて一定の安心感を持ちながら、新しい可能性にチャレンジする副業経験は、「いきなり独立はとんでもない」というタイプの人には、とてもフィットした働き方になりえます。

実際に副業を実行している人の時間のやりくりは、朝10時から夜8時まで本業で勤務しながら、副業は主に土日にまとめてこなし、残った業務を平日の夜帰宅後に対応するというスタイルが多いようにみえます。土日の作業時間は2、3時間程度に抑えて、無理なく継続していくことがポイントになるようです。

依頼さえあれば、経験職種だけに限定せず、幅広い業務にチャレンジし、新しい領域の知識をインプットすることによって、稼ぎながら自己研さんにつなげるというメリットもあります。自分が経験してきたスキル資産を活用して、ぜひ自分の力で可能性を押し広げていただきたいと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

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