アップル、アプリ申請の4割却下 審査の実態を初開示
【シリコンバレー=白石武志】米アップルは29日、「iPhone」などの自社製品向けのアプリ配信サービスに登録申請されるアプリのうち、40%をプライバシー上の懸念などを理由に却下していると明らかにした。アプリ審査の実態を開示して事業モデルへの理解を広め、アップルが支配的な権限を不当に利用していると主張しているソフトウエア開発者らの批判をかわす狙いとみられる。
29日未明に米国の自社サイトにアプリ配信サービス「アップストア」の運用の透明性に関するページを開設した。アップルはソフト開発者から申請のあったアプリを配信する前に、自社のガイドラインで定めるプライバシー保護やセキュリティーなどの基準を満たすかどうかを審査しており、その実態を初めて公表した。
同ページによると、アップストア上では毎週約10万点のアプリ配信の申請があり、ほとんどの審査を申請から24時間以内に実施しているという。現在は申請されたアプリの40%が却下されているといい、主な理由としてはプログラム上のバグ(誤り)やプライバシー上の懸念などを挙げた。
申請を却下したソフト開発者には原因を確認したり異議を申し立てたりする機会を与えている。アップルのアプリ審査チームは却下につながった問題を特定して解決を促すため、ソフト開発者に1週間に約1000件の電話をかけてアプリを配信できるよう支援していることも明らかにした。
米グーグルはスマートフォン向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」のアプリについて電子メールやウェブサイトでの配布を認めているが、アップルはサービスの健全性を保つことなどを理由にアップストア以外でのアプリ配信を認めていない。一部のソフト開発者の間ではアップルが支配的な立場を利用して自社のライバルをアップストア上から排除しているとの声も上がっているが、アップルはカレンダーや写真管理、データ保管などの分野で自らと競合するアプリを例示し、競争を歓迎しているとの認識を示した。
アップルがアプリの売上高の15~30%を手数料として得ていることについては、音楽配信サービスで競合するスポティファイ(スウェーデン)が今年3月、公正な競争を阻害しているとして欧州連合(EU)の欧州委員会に訴えを起こしている。米消費者もアップルの手数料がアプリの価格を不当につり上げているとして、反トラスト法(日本の独占禁止法)違反に問うよう求める集団訴訟を起こしている。
アップルはこうした動きを念頭に、29日に公開したページの中では84%のアプリが無料で配信され、アップルが手数料収入を得ていない点を強調した。アプリ開発支援ツールなどを通じてソフト開発者の育成に努め、米国で累計150万人、欧州で157万人を超える雇用を生み出してきた実績なども訴えた。