産油国ノルウェー、政府系ファンドが「石油外し」
【ロンドン=篠崎健太】ノルウェー財務省は8日、世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金が、石油・ガス関連株の一部を投資先から外すと発表した。原油価格の下落による長期の運用リスクを抑える。機関投資家の関心が高まっている気候変動リスクに対処するねらいもある。産油国ノルウェーが「石油外し」に動いたことで世界の機関投資家にも影響を与える可能性がある。
同基金はノルウェー政府が北海油田から得る収入を元に、世界の株式や債券、不動産などに分散投資している。2018年末時点の運用残高は8兆2560億クローネ(約104兆円)と巨大だ。運用を担うノルウェー銀行(中央銀行)は17年11月、資源相場の変動によるリスクが比較的高いとして、石油・ガス株の投資除外を提言していた。
今回の決定は、石油・ガス関連企業を一律には排除しないのが特徴だ。英指数サービス会社、FTSEラッセルが定める国際業種小分類で「探鉱・生産」に入っている企業だけを除外する。
ノルウェー銀によると、18年末時点で除外対象になる企業の保有株総額は約660億クローネ(約8300億円)だった。財務省の報告に基づく議会での審議などを踏まえ、時間をかけて売却する。開示資料を日本経済新聞社が分析したところ、18年末時点で保有する日本株では国際石油開発帝石、出光興産など6銘柄が該当した。
一方で再生可能エネルギーの成長性に注目し、川下や再生エネまで幅広く手掛ける総合企業は残す。米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BPといった石油メジャーへの投資は続けられるもようだ。
シーブ・イェンセン財務相は声明で「原油価格の長期的な下落に対する脆弱性を減らすことが目的だ」と強調した。気候変動問題が運用上の重要なリスク要因になっているためとも説明した。温暖化対策の環境規制などによる長期的な運用リスクを抑えたい考えだ。原油相場の見通しや業界の収益性、成長持続性をめぐる予想に基づく判断ではないという。
原油への歳入依存度が高いノルウェーが石油・ガス株投資からの一部撤退に動く背景には、長期的なエネルギー転換を見越して国富の分散が重要だとの判断がある。一律な排除はせず再生エネ重視をにじませた巨大投資家の決定は、世界の他の機関投資家にも影響を与える可能性が高い。