北電、続く苦境 販促不発・新電力台頭・泊再稼働遠く
北海道電力が苦境から抜け出せない。27日に発表した2018年3月期の連結決算は88%の最終増益だったが、収益の源泉である電力販売量は8%減った。17年4月に投入した新料金プランの販促は低調で、新電力の台頭で本州から流入する電力量は増加。原子力発電所の再稼働も見通せない三重苦のなか、一層の経営効率化が求められる。
「販売電力量の減少が続いている。(増益は)喜べるものではなく、さらなる収益拡大を図る必要がある」。記者会見で真弓明彦社長は厳しい表情を崩さなかった。
165億円の純利益のうち、150億円は火力発電所の定期修理が少なく、設備修繕費が減ったことによるもの。売上高は7330億円と4%増えたが、燃料価格の上昇が電力料金に反映された結果にすぎない。
北電が17年4月に投入した家庭向けプラン3種は新電力に対抗できる料金水準だったが、加入は計3万件程度にとどまる。北電の販売電力量は17年3月期に前の期比6%減。18年3月期の販売量減少率はさらに2ポイント悪化し、顧客流出に歯止めがかからない。18年4月に投入した追加の新料金プランに望みをかける。
新電力の販売攻勢も強まっている。本州の電力事業者からみて北海道は電力料金が高く、発電コストが同じなら東北や東京より利ざやが大きい「宝の山」だ。電力広域的運営推進機関のまとめによると、16年度に北本連系線を通じて本州から北海道に流入した電力量は10億3300万キロワット時。一般家庭年間消費電力で20万世帯分におよび、15年度と比べ3割増えた。
セブン―イレブン・ジャパンは6月、道内店舗の電力を北電から新電力へ切り替える。大手企業による電力乗り換えの動きは道内でも広がりつつある。
北電が収益改善の切り札と見なす泊原子力発電所(泊村)の再稼働時期も見通せない。3月中旬にまとめるとしていた敷地内断層の調査結果は原子力規制庁から「データが十分ではない」として再提出を求められた。新設する方針の防潮堤も、主に盛り土で造った古い防潮堤の工事に2年を費やしたことを勘案すると、着工から完成まで数年を要する可能性がある。
北電は19年春の定期採用数を18年春より4割減の100人程度に抑える計画だ。定年退職などの退職者数より採用を少なくする「緩やかな人員削減」で人件費の抑制を狙う。当面はこうした守りの経営で窮地をしのぐこととなりそうだ。