米、車の燃費基準を大幅緩和 オバマ前政権から一転
【シリコンバレー=白石武志】米環境保護局(EPA)は2日、オバマ前政権下で定められた車の燃費基準を大幅に緩和すると発表した。温暖化対策に消極的なトランプ政権の路線を反映し、政策を一転させた。電気自動車(EV)の普及を見据えつつ燃費規制を強化している欧州や中国などの動きに逆行するもので、米車産業の技術革新の停滞を招く恐れもある。
緩和の対象は2022~25年型車の燃費基準。EPAのプルイット長官は2日、「オバマ政権の決定は間違っていた」と断じ、オバマ政権下の12年に決められた暫定措置の撤回を決めた。
現行の米国の燃費基準の適用期間は17~25年で、乗用車については25年までに燃費を17年比で約3割改善するよう求めている。達成できなければ罰金が生じる。22年以降の燃費基準については暫定値としており、18年までに見直す必要があるかどうかを中間評価することが法案施行時に定められていた。
オバマ政権下だった16年7月にまとめられた中間評価の報告書では、自動車各社が基準値を前倒しで達成しつつあることなどを理由に暫定値を変える必要はないとの見解を示していた。
プルイット長官は2日の報道発表資料の中でこの報告書について「政治的な便宜のためにプロセスが短縮され、燃費基準を高く設定しすぎた」と指摘。22~25年の暫定基準については米運輸当局と連携し策定し直す方針を示した。
自動車の燃費を巡っては欧州が最も厳しい基準を取り入れている。乗用車については21年までに走行距離1キロメートル当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を15年比で3割少ない平均95グラム以下にするよう自動車メーカーに求めている。
米国の基準は欧州よりも緩いが、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど米国の自動車メーカーなどでつくる業界団体は基準値が厳しすぎるとして規制緩和を求めていた。
連邦レベルの基準とは別に、カリフォルニア州は排ガスを一切出さない車を一定割合で販売するよう義務付ける独自の環境規制を設けている。EPAは各州政府が連邦政府よりも厳しい環境規制を設定できるようにする現在のルールを取り消すかどうかも検討するとしている。