中国、異例ずくめの軍事パレード 短い間隔、演習場で実戦部隊
【北京=永井央紀】中国人民解放軍は30日、内モンゴル自治区で8月1日の軍創立90年を記念するパレードを実施した。最新鋭の戦闘機やミサイルを公開し、習近平国家主席が閲兵した。創立記念日に合わせたパレードは初めてで、前回との間隔も短いなど異例ずくめとなった。習氏による改革の成果も強調しており、5年に1度の共産党大会を前に習氏の軍掌握を誇示したとみられる。
中国国営中央テレビがアジア最大の演習場とされる「朱日和訓練基地」で実施された軍事パレードを生中継で伝えた。中国国防省は今回の行事を中国語で「閲兵」と発表し、中国共産党機関紙の人民日報(電子版)日本語版は「軍事パレード」と表現した。
中国の軍事パレードは10月の建国記念日に合わせて10年に1度、北京で行われるケースが多い。前回は2015年9月の「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年」記念パレードで、わずか2年後という時期や演習場という場所など従来と違うところが多い。
中国メディアによると、今回のパレードでは核を搭載できる新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風31AG」や、空母キラーと呼ばれる対艦ミサイル「東風21D」を披露。敵軍のレーダー・通信を妨害する車両も参加した。これらは習氏主導の軍改革によって新設された「ロケット軍」や「戦略支援部隊」に所属するとみられ、軍改革の成果を示した格好だ。
今年3月に就役したばかりのステルス戦闘機「殲20」や、昨夏就役の大型輸送機「運20」も登場し、軍の近代化を強調。戦闘機が飛行しながら火炎弾(フレア)を発射したり、習氏の前にヘリが着陸して兵士が攻撃配置についたりするなど実戦的な動作も披露した。
軍事パレードで定番の儀仗(ぎじょう)隊は現れず、参加した約1万2千人の兵士は全員が戦闘部隊に所属。実戦部隊の士気や求心力を高める思惑がのぞく。
習氏は迷彩服姿で軍車両に乗って閲兵し、軍の最高指揮官であることを強調。「強軍建設という目標を達成し、我々の軍を世界一流の軍隊にする」との方針を示した。さらに「我々の軍は侵略してくるあらゆる敵を打ち負かし、国の主権や安全、利益を守る能力がある」と呼びかけた。
関係者によると、演習場で開催した理由の一つは、首都の北京では市民生活や経済への影響が大きいためだという。15年のパレードでは大規模な交通規制が敷かれ、一部のビルや住宅からの一時退去が求められた。経済成長の鈍化などで社会の不安定化要因が増す中、庶民の不満を気にする習指導部の姿がのぞく。