IBM、半導体製造を譲渡 15億ドル支払う条件で
【ニューヨーク=稲井創一】米IBMは20日、不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社のグローバルファウンドリーズ(GF)に譲渡すると発表した。IBMは今後、3年間にわたり計15億ドル(約1600億円)をGFに現金で支払う。構造改革を急ぎ、人工知能型コンピューター「ワトソン」など付加価値の高い事業に経営資源を集中させる。
半導体製造部門の譲渡を巡り、IBMは15億ドルの支払いを含め税引き前費用として2014年7~9月期に47億ドルを計上する。IBMは米国にある半導体工場のほか、半導体の知的財産や技術者も含めて譲渡する。GFはIBMの半導体製造・加工技術を獲得することで生産効率化を急ぎたい考え。今後10年間、IBMに対しサーバー用語>用半導体を供給する。
ただ、IBMは半導体はサーバーなどハード事業の競争力強化に不可欠とみて、今後、5年間で半導体開発に30億ドル投資する方針。最先端の微細化開発技術などは自社で保有し続ける。
半導体製造部門の譲渡は、今年初めに発表した中国レノボ・グループへの低価格サーバー売却に続き、業績変動の大きい事業の切り離しとなる。
事業の選択と集中を加速する背景には低調な業績がある。同日発表の14年7~9月期決算で、売上高は前年同期比4%減の223億ドルと10四半期連続の減収となった。バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)は「業績には失望している。前例のないペースで業界が変化している」とのコメントを出した。
米グーグルやアマゾン・ドット・コムなど新興勢との競合も激しくなっているほか、顧客が割安にIT(情報技術)ソフトなどを利用できるクラウド・コンピューティング普及の波が押し寄せている。14年7~9月期は注力するサービスやソフトも減収となった。
ハードウエア部門は15%減収と高額なメーンフレーム(汎用機)が低調だ。地域別では米国、欧州、アジア・太平洋地域で減収となった。新興国は中・南米が好調だが中国の低迷が続いている。
IBMは、中期経営目標として掲げてきた15年の1株利益(特別項目除く営業ベース)20ドル以上を断念することも表明した。成長路線に回帰できるかどうかIBMは正念場を迎えている。