セブン&アイ新体制始動、「経営陣は一枚岩」訴え
鈴木氏退任、しこりは消えず
セブン&アイ・ホールディングスは26日、井阪隆一社長をトップとする新しい経営体制を発足させた。同日の株主総会で鈴木敏文会長と村田紀敏社長が退任。総会後の取締役会で正式に社長に就いた井阪氏は東京都内で記者会見し、「最重要課題は経営陣が一枚岩になること」と強調した。人事を巡る一連の混乱は収束したものの、株主総会では鈴木氏の退任を惜しむ株主が多く、社内外に生じたしこりは消えていない。
「本音で語れる風土ではなかった」。記者会見で井阪氏は「一枚岩」という言葉の理由をこう説明。グループの全権を掌握していた鈴木氏のトップダウンの経営体制から「風通しの良い自由な雰囲気で率直に語れる企業風土にしたい」と軌道修正する方針を示した。
セブン&アイは鈴木氏が中核子会社、セブン―イレブン・ジャパンの社長だった井阪氏を更迭する人事案を推し進めた結果、社内が混乱。4月7日の取締役会での人事案の否決を受け、鈴木氏が引退を表明した。
株主総会では7日の取締役会の採決方法に株主から質問が寄せられた。無記名投票の結果は賛成7、反対6、棄権の白票2。取締役15人の過半に賛成が届かなかった。
「それぞれの取締役が賛成や反対、白票を投じた理由を聞きたい」という株主の質問に対し、議長を務めた村田氏は「禍根を残さないために無記名にした。結果、井阪氏の交代案は否決され、その時点から全員がノーサイドで経営にあたってきた」と投票内容への具体的な言及は避けた。
「全員一致で無記名投票にしたのなら、投票結果を全部精査したほうがいい。そうでなければ結局はしこりが残る」という質問には「ノーサイドという考え方でここにいる役員は並んでいる」と答えるだけだった。
4月7日の取締役会の結果を受け、セブン&アイは村田氏を中心に新たな人事案を策定。15日の指名報酬委員会を経て、19日の取締役会では井阪氏のセブン&アイ社長への昇格が正式に決議された。この間、井阪氏は退任する鈴木氏に「顧問として会社に残ってほしいが、影響力が残るので本社ビルからは出てください」と告げていた。
総会では「功労者の鈴木会長を追い出すのは許せない」と涙ながらに語る株主もいた。名誉顧問に就いた鈴木氏の執務室について、村田氏は「会社の近くにオフィスを開設し、いつでも役員や社員が相談できる体制を組む」と釈明した。
「鈴木会長の退任を延ばせないか。会社が傾いてしまう」と訴えた株主には鈴木氏自らが回答。「私も年です。若い人が十分に後を継いでくれる自信が持てた」と新体制への支持を求めた。
総会の最後には鈴木氏のもとに井阪氏が歩み寄り、握手を交わす場面もあった。混乱の収束を印象付けようという会社側の思惑が見え隠れするなか、結果的には鈴木氏の存在の大きさが改めて浮き彫りになった。
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